ラグビー日本代表、再始動の欧州遠征 SH齋藤、FLリーチらの評価は?

構成:スポーツナビ
 ラグビー日本代表(世界ランキング10位)は3日、アイルランド代表(世界ランキング4位)と対戦し、31対39で敗れた。2019年ワールドカップで勝利した相手にリベンジを許した試合について、元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。

日本ラグビー全体の質が高くなっている

日本代表FB松島幸太朗はアイルランド代表に厳しくマークされた 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】

――日本代表はアイルランド代表に惜敗しましたが、試合のポイントになった部分は?

 お互いに得点の後のキックオフでミスが起こり、スコアした後に相手に返される……というシーソーゲームになりました。その結果、19年の対戦(19対12で日本が勝利)より両チームの得点が増えたと思います。その中で日本は後半にペナルティーやミスが重なり、FB松島幸太朗の負傷交代もあって終盤に勢いを失いました。

 アイルランドのディフェンスが思ったよりも前に出てこなかったので、日本はスペースを使った高速アタックがやりやすかったはず。この試合の日本はモール、キックパス、カウンターといろいろな形からトライを奪いましたが、スペースがあれば世界トップ級からもこれだけ得点できる、というのが進化している部分だと思います。

――過去にはトップリーグから国際試合に移る中でレベルの差に苦しむこともありましたが?

 過去にはトップリーグのシーズン後にまずアジア勢と戦って、徐々に相手のレベルを上げていましたが、今回はトップリーグからいきなりライオンズ、アイルランドという強豪が相手。それでもしっかり戦っていて、日本のステージが上がったと感じます。

 選手たちは15年、19年ワールドカップで好成績を残してから高い意識でプレーしていますし、世界の名選手が加わったこともあってトップリーグのレベルは上がりました。国内で切磋琢磨したことで、日本ラグビー全体の質が高くなっています。

SH齋藤直人に求められるもの

先発出場で奮闘したSH齋藤直人(左) 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】

――6月26日のライオンズ戦(10対28で敗戦)で良いプレーを見せた齋藤直人選手が先発しましたが、同じSHとしてどう見ましたか?

 齋藤選手はライオンズ戦で難しい状況でも攻撃の流れをつくって素晴らしかったです。SHは先発ではゲームコントロールが求められますが、今日は良い部分も悪い部分も出たのではないでしょうか。持ち味を生かしてトライを奪った一方で、ペナルティーやダイレクトタッチもあり、敵地でアイルランドと戦う難しさを感じたと思います。

 日本代表で活躍してきた田中史朗選手(キヤノン)や流大選手(サントリー)はゲームコントロールに優れています。また、トップリーグで大活躍したTJ・ペレナラ選手(元NTTドコモ)は試合中に相手が嫌がることを常にやってきます。
 彼らは仲間の体力を把握しながらテンポを変えますし、必要なら“ずる賢い”プレーも選択します。

 齋藤選手は23歳と若いので、自分とタイプの違うSHからも学びながら大きく成長してほしいと思います。世界4位のチームと先発で戦う経験はなかなかできませんから、ここでジョセフHCが選んだことを正解にしてもらいたいですね。

――SO田村優選手の活躍も光りました。

 前半はオープンスペースを効果的に使い、後半3分には狭いサイドを自ら抜いてからWTBシオサイア・フィフィタ選手のトライをアシストしました。あの狭いスペースをキックパスで通すアイデアとスキルは彼ならではだと思います。普通はあのスペースを見つけても蹴れませんから。

 個人的にはライオンズ戦かアイルランド戦のどちらかで松田力也選手を10番で起用してほしかったです。パナソニックがトップリーグで優勝したのは彼の活躍が大きかったと思いますし、今季はゾーンが一段上がったと感じていたので。
 松田選手は10〜15番をカバーできるのでリザーブにいると重宝する選手ですが、スタートから出る経験を積むところも見たいですね。

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