J最強フロンターレはACLをどう戦うのか 中村憲剛が挙げたポイント、キーマンは?

林遼平

個人的には小林悠に期待

キーマンにはACLでの経験も豊富な小林悠を挙げた。「年齢的にもこの先、何回もチャンスがあるわけではない」とも 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

――今大会はレギュレーションが変更により、集中開催となります。

 求められるタフさが全然違うのかなと。今回はリーグ戦と並行して戦い、ミッドウィークに海外に遠征するタフさが求められるわけではありません。中2日の6連戦です。それにこれまでは、こちらのホームではベタ引きして守ってきたり、こちらがアウェイのときは、試合開始からフルスロットルで攻めてきたりと、相手が戦い方をガラッと変えることがありました。でも今回は、そうしたことが少し薄まると思っています。一方で、集中開催の過密日程なので、グラウンドがどんどん悪くなっていく可能性があって、経験したことのないような空気感やピッチ感でプレーすることになるでしょうね。これまでとは違うタフさやマネジメントが求められると思います。

――集中開催だからこそ、初戦はさらに大事になってきそうですね。

 初戦はすごく大事になると思います。もちろん全部で6試合あるので取り返すことはできますが、やはり相手に勝ち点を与えてはいけない。その後の戦いはみんな疲弊しながら対策を練らないといけないし、誰が出てくるかも読まなければいけない。独特なスキルが求められるのではないかなと思います。

――対戦相手の印象はありますか?

 大邱FC(韓国)、北京FC(中国)、そして、ユナイテッド・シティFC(フィリピン)。正直、未知だと思います。フロンターレとしても北京とは対戦したことがありますけど、それも10年くらい前のこと。そういう意味では試合をやってみないと分からない。

 大邱の情報は、(チョン・)ソンリョンがチームのみんなに伝えていると思います。やはり大邱との初戦が一番大事になると思います。そこで勝ち点3を手にして、相手に勝ち点を与えずにグループリーグをスタートさせるのが一番理想的だと思います。

――グループリーグ突破のポイントは?

 最初の北京戦、大邱戦を1勝1分け以上の結果を収めて、フィリピンのユナイテッド・シティとの2連戦でしっかり勝ち点6を積み上げることだと思います。そうすれば勝ち点が10になり、残りの2試合のマネジメントがしやすくなって突破の可能性が高まる。初戦は自分たちらしくなくてもいいので、泥臭くても、とにかく勝ち点3をもぎ取れたら、いい形で進めるのかなと。

――中村憲剛的キーマンを教えてください。

 個人的には小林悠選手に期待しています。ACLの経験も多いし、年齢的にもこの先、何回もチャンスがあるわけではない。ACL制覇に関して、他の選手とは少し違う捉え方をしているのではないかと思います。また、こういうときに点を取れる選手でもあります。今のチームにはアジアのチームとの戦い方を知っている選手が意外と多くない。そういう意味では経験値を持っている選手の存在が重要になると思います。

新しい歴史を作ってほしい

まずは自分が楽しみながら、ACLで自身が経験してきたものを解説で伝えたいという 【YOJI-GEN】

――今回、DAZNでACLが中継されることになり、憲剛さんが初めてフロンターレの試合の解説をされると聞きました。そこに関してはどんな思いがありますか?

 正確に言うと、今年のFUJI XEROX SUPER CUP でやっているんですけど、あのときはガンバ大阪側に播戸さん(播戸竜二)がいたので、ダブルゲスト解説のような形でした。なので、僕ひとりでフロンターレの試合を解説するのが初めてということですね。今回はJリーグのチームと戦うわけではないので、全力フルスロットルでフロンターレを応援しようかなと。

 せっかくなので「そういう側面もあるの?」っていうくらいの解説をしようかと思っています。それは冗談です(笑)、対アジアは熱くなりがちですからね。フタを開けてみないと自分がどういう感じで話すのか分からないですけど、楽しみです。

――ACLを解説するうえで、これまでの解説との変化もありますか?

 ACLを見てくださる視聴者の方に経験してきたものを伝えることも、経験者の武器だと思います。そういう意味では、起きた現象に対して「こういうのがACLの特徴のひとつですね」というシーンもあると思います。何を話すかはプレーを見てみないと分かりませんが、一番大事なのは自分が楽しむことだと思うので、しっかりと伝えられればなと思います。

――最後に、憲剛さんは昨年の引退会見後のメディア対応で「ACLは託します」と話していました。あらためてこれからACLに臨むチームへのエールをお願いします。

 そうでしたね。ただ、彼らは託されたとは思っていないでしょうし、そんなに重いものでもないと思います。彼らはアジアを獲る、フロンターレの新しい歴史を作るという気持ちで臨むと思うので、そこに向けて僕はOBとして応援したい。

 日本国内でフロンターレはここ数年、いろいろな意味で大きくなってきました。ここでアジアを獲れれば、さらに上のステージに進めると思います。逆に、獲れなければ、やはり内弁慶だと言われてしまう。そういう意味でも、気持ちの入る戦いになると思います。それを僕は解説者としてサポートできればいいなと。アジアのタイトルはクラブの悲願なので、とにかく勝ってほしいです。まずはグループステージ突破を期待しています。

(企画構成:YOJI-GEN)

中村憲剛(なかむら・けんご)

1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。中央大学を卒業後、2003年に当時J2の川崎フロンターレに加入。以降、2020年限りの現役引退まで川崎Fひと筋でプレーし、J1昇格、ACL出場、さらに3度のリーグ優勝、YBCルヴァンカップ制覇、天皇杯優勝を成し遂げた。個人としても2010年には日本代表として南アフリカワールドカップに出場、2016年JリーグMVPに輝いた。現在はフロンターレ リレーションズ オーガナイザー(FRO)を務める一方で、日本サッカー協会のロールモデルコーチや解説者などとしても活動している。

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著者プロフィール

1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任し、『Number Web』などにも寄稿している。

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