若い才能から「国の英雄」のベテランまで ユーロで活躍が期待される注目選手10選

清水英斗

イニエスタを彷彿とさせる注目のMFペドリ

10代とは思えないほど完成度の高いプレーをするベドリ。メンタルも落ち着いている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 MFも頭角を現す若手が多い。オランダのフレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)、イングランドのフィル・フォーデン(マンチェスター・C)など、すでにビッグクラブでプレーする選手ばかりだが、その中でも一際若く、注目を集めるのは、18歳でスペイン代表のペドリと、17歳でイングランド代表のジュード・ベリンガムだろう。

 2人共に技術と状況判断に加え、活動量も多い選手だが、バルセロナに所属するペドリはよりテクニカルで、アンドレス・イニエスタを彷彿とさせるプレースタイル。一方のドルトムントでプレーするベリンガムは、チームトップのデュエル勝利数を誇るなど、守備のハードワークに特徴がある。ただ、驚くべきは、どちらも10代とは思えないほど、完成度の高いプレーをする点だろう。プレーに隙がなく、メンタルも非常に落ち着いている。必見の2人だ。

 彼ら若手に加え、もう1人を中盤で推すとしたら、やはりフランス代表のエンゴロ・カンテだろうか。30歳を迎えたチェルシーのダイナモMFは、相変わらずの走力とボール奪取力を誇り、チャンピオンズリーグ(CL)決勝でも大活躍した。技術的にも年々洗練されており、一度ピッチに立てば、1人で何役もこなす。今がピークなのかどうかは分からないが、脂が乗り切ったプレーをし、でも性格は相変わらずおとなしいカンテから目が離せない。

大物が目白押しのFW、「国の英雄」も

37歳のFWゴラン・パンデフは、自身のゴールで北マケドニアをユーロ初出場に導いた 【写真:ロイター/アフロ】

 最後にFW、こちらは大物が目白押しだ。ベルギー代表のロメル・ルカク(インテル)、イングランド代表のハリー・ケイン(トッテナム)ら、多くのストライカーがしのぎを削るが、その中でも注目は、フランス代表のキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)だろう。スピードやドリブルだけでなく、得点力も際立ち、2018-19はリーグ33得点、2019-20はコロナ禍でリーグが10節分を残して打ち切られた関係で18得点にとどまったが、今季は27得点。1試合平均でほぼ1ゴールと、高い得点率を誇る。

 もう1人気になるFWは、ドイツ代表のカイ・ハヴェルツだ。今季CL決勝のマンチェスター・シティ戦では、前半42分にチェルシーを優勝へ導く決勝ゴールを決めた。左利きでキックの精度が高く、足元で受けて起点にもなれるが運動量も豊富で、前述の決勝ゴールに見られるように、裏抜けもうまい。やや特徴がはっきりしないため、フランク・ランパード監督時代はベストポジションが見つからず苦しんだが、同じドイツ人のトーマス・トゥヘルが就任してからは、9番と10番の間で自由に知性を発揮し、飛躍することになった。トーマス・ミュラーの復帰により、前線の組み方がどうなるかは分からないが、セルジュ・ニャブリらとともに、ドイツの攻撃を膨らませるキープレーヤーになりそうだ。

 最後に推すのは、北マケドニア代表のゴラン・パンデフ(ジェノア)である。長友佑都とインテルで同僚だったことも印象深い、この37歳のFWは、ユーロ予選プレーオフのジョージア戦で決勝ゴールを挙げ、北マケドニアを初出場に導いた。まさしく、国の英雄である。

 今年3月のカタールW杯欧州予選で北マケドニアはドイツと対戦し、2-1で破るという快挙を成し遂げた。その試合で先制ゴールを挙げたのも、パンデフだった。左足のキックと決定力は、今も健在だ。イゴール・アンジェロフスキ監督はキャプテンを務めるパンデフについて、「国の歴史を作るためにライオンのように戦ってくれた」と称賛を惜しまない。

 まばゆいばかりの若い才能から、「国の英雄」として戦うベテランまで。ユーロは今大会もさまざまなストーリーが生まれそうだ。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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