【スキー】ノルディック世界選手権 複合・混合団体 ゴール前における進路妨害に対するFISへの抗議・上訴について

チーム・協会
 ノルウェー・トロンヘイムで開催されたノルディックスキー世界選手権で2月28日に複合の混合団体が行われ、日本は3位と0.2秒差の4位でした。
 このレースにおいてゴール前で3位オーストリア選手の進路妨害があったとして、日本チームは試合後にFIS(国際スキー・スノーボード連盟)に抗議を行いましたが認められず、メダルには届きませんでした。


 日本チームが進路妨害を訴えた混合団体の後半レース

日本の抗議で約1時間の審議、一度はオーストリア失格も順位は変わらず

 男女各2選手が出場する混合団体の日本はオーストリアと激しい3位争いをしており、最終走者の山本涼太選手(長野日野自動車SC)はオーストリアのヨハネス・ランパルター選手のすぐ後ろにつけて最後の直線へ。内側にポジションを取り、速度を上げて追い抜こうとフィニッシュゾーンへ差し掛かりかけたところで、ランパルター選手が突如中央から山本選手のいた内側レーンへ強引に走路を変更。スキーが接触したことで山本選手は一瞬バランスを崩し、最大の加速をかけていたところに致命的なロスが生じました。それでも持ち直して追い上げ、懸命にゴールラインに足を伸ばしましたが、スキー板半分ほど及ばず4着となりました。
 
 レース後、日本チームはFISの定める国際競技規則(ICR)に反する進路妨害があったとしてFISに抗議。約1時間に及ぶ審判団による審議で一度はオーストリアに失格が言い渡されましたが、オーストリアからの抗議で当該場面の映像分析およびICRで定められた各条項が検証された結果、妨害行為はなかったとの判断に至りました。

銅メダルを懸けてフィニッシュゾーンに入る日本のアンカー山本選手(右) 【Julia Piatkowska/FairFocus】

銅メダルを懸けてフィニッシュゾーンに入る日本のアンカー山本選手(右) 【Julia Piatkowska/FairFocus】

銅メダルを懸けてフィニッシュゾーンに入る日本のアンカー山本選手(右) 【Julia Piatkowska/FairFocus】

FIS上訴委員会への上訴と回答

 3位に入っていれば日本にとっては世界選手権の混合団体では初めて、団体では4大会ぶりのメダルでした。全日本スキー連盟(SAJ)としてこの決定は受け入れられるものではなく、ICRに則り以下2点を理由にFIS上訴委員会に上訴。委員会に対し再審議および順位訂正を求めました。

 ・ランパルター選手の行為にICRで「選手の責任」として定める「全ての競技会において妨害は認められない。こういった行動は身体の如何なるパーツ又はスキー用具を使って故意に妨害、ブロック、体当たり、押しつけと定義される」に対する明らかな違反が認められる

 ・FIS公式サイトに掲載された同選手のレース後のコメント「F1と同じで、フィニッシュ走路の選択ができるのは前にいる選手です。後ろで彼(=山本選手)のスキーと接触していることに気づき、自分のスプリントが最速ではないことも分かっていたので走路を少し変更する必要がありましたが、自分の選択は全て正しかったと思います」が意図的な妨害行為であったことを示唆

 また、今回のケースが妨害と認められないのであれば、こうした行為が戦術として認められる先例を作ることになり、ノルディック複合の価値およびイメージを著しく損ないかねないことに深い懸念を抱いていることも申し添えました。

 しかしながらSAJの上訴は認められず棄却されました。委員会は決定理由として、ランパルター選手の進路変更時の一連の動きは「通常ではないものの、それらは状況証拠であり意図的な妨害を証明するものではない」こと、またレース後の発言に関しても「明確な意図を示すものではなく、戦術選択から生じた事象である」ことを挙げました。

河野競技本部長「非常に重く受け止めている。引き続き抗議をしていく」

 河野孝典 競技本部長
「 SAJはこの決定を非常に重く受け止めている。今後の対応策についてSAJ内で協議している。このような妨害行為が戦術として認められる前例となれば、ノルディック複合競技の価値を著しく損なうことにつながりかねない。引き続きFISに抗議をしていきたい」

久保ヘッドコーチ「正々堂々戦った選手たちを誇りに思う」

 久保貴寛 ヘッドコーチ
「出場した選手は最高のパフォーマンスを発揮してくれました。チームスタッフも最高のサポートをしてくれました。レース直後に日本チームはオーストリア最終走者の行為について抗議を行いましたが、判定が変わることはありませんでした。ルールのもと、パフォーマンスを競い合うのがスポーツです。しかし、今回の行為が妨害行為ではないとみなされることにより、今後のノルディックコンバインドのレースにおいて同様の妨害行為が蔓延し、クリーンでフェアなスポーツから遠ざかってしまうことを危惧しています。日本チームとしては今後このようなことがないよう、ルール更新や明確化をFISに対して求めていきたいと考えています。最後に、私としては正々堂々レースを戦った選手たちを誇りに思っています」
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著者プロフィール

公益財団法人全日本スキー連盟は、日本におけるスキー・スノーボード競技を統括すると同時に、普及・振興の役割も担う競技団体。設立は1925年、2025年には設立100周年を迎える。スキージャンプ、ノルディック複合、クロスカントリー、アルペン、フリースタイル、スノーボードの6競技において、世界で戦う選手たち「SNOW JAPAN」の情報や、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップなどの大会情報をお届けします。

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