内村航平、4度目五輪出場への鍵とは? スペシャリストに求められる高いハードル

平野貴也

内村を追うスペシャリストたち

跳馬で高得点を出した米倉英信も個人枠での出場を目指す一人だ 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 内村が予選で見せた演技では、離れ技のコールマンで手の位置が近くなって動きが詰まり、着地が少し後ろに跳ねるという課題があった。それでも15点台という高い得点だったのだが、スペシャリストに求められる演技の完成度は、限りなく高い。

 日本には、ほかにもスペシャリストがいる。今大会では、跳馬に出場した米倉英信(徳洲会)が、内村と同じく現状のランキング(跳馬の1位は、14.966点)で40ポイントとなる演技を予選と決勝の2本で披露した(15.166点、15.266点)。自身の名が付いたヨネクラなど難度の高い技で着地を止め、決勝では「これ以上はないかなっていうくらい良かった」と手応えを示した。ゆか(現状の世界ランク1位は、15.300点)で15.433点、15.200点と高得点をマークした南一輝(仙台大)も後を追う。

 米倉は、内村の印象を「しっかり(高得点を)取って来るなという印象。綺麗に演技を通し切ったときに、40ポイントが取れる。2分(0.2)、3分(0.3)は平均して(15点を)超えられる実力。僕は(2回の演技で)どっちも完ぺきじゃないと超えられない。そこが違うなと思う」と語り、内村が誇る高レベルでの安定感が、他と一線を画すものであることを認めた。しかし、内村にミスがあれば付け入る力を持つ選手は、いる。

次回大会は5月に行われるNHK杯。出場のハードルは決して低くないが、内村は観衆を魅了する演技で代表の座をつかみ取りにいく 【写真:アフロスポーツ(代表撮影)】

 緊迫感のある代表選考対象の次回大会は、5月に行われるNHK杯。内村は「NHK杯は、1日だけなので集中して(臨みたい)。着地ですよね。着地の感覚が、まだ練習でも良くなってきていないので、重点的に進めていければ」と課題を挙げた。32歳になり、体力面のカバーも必要だが、技術を身体にすり込んで動きのロスをなくすことで、演技をやり通せる力を保持する考えだという。

 内村は、これまで「美しい体操」と「総合」にこだわってきた。6種目で完成度が高く、観衆を魅了する演技を見せることで、体操界のキングとして海外の選手からも高い評価を受けてきた。しかし、負傷状況や体力等のコンディションから両立は難しくなった。地元開催の大一番に向けた決断は、ミスが許されないスペシャリストとしての勝負。より細部にこだわる内村が、演技をさらに研ぎ澄まし、4度目の五輪切符をつかみにいく。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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