連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

堀米雄斗が閃く誰も真似できないトリック ストリートが育んだスケートボードの才器

C-NAPS編集部

ストリート文化の本場・米国で研鑽を積む

スケートボードの世界最高峰プロツアー「ストリート・リーグ」で優勝を飾るなど、本場・米国で腕を磨く堀米(写真中央) 【Getty Images】

 僕にとってスケートボードはまさに“生活そのもの”で、体の一部みたいな感じですね。買い物も食事も、スケートボードがあればどこへでもピューっと行けちゃいます。米国はどこへ行くにも距離があるので、さすがに車で移動することが増えましたけどね(笑)。

 米国に来て実感したのが、ストリートの文化が認められていることです。それが日本との大きな違いだと思います。米国には至るところにスケートパークがありますし、人々の暮らしにスケートボードが溶け込んでいるイメージです。完璧なパークがすでに用意されているので、練習環境としては申し分ないですね。

 また、街中を滑っていても、「乗らせてよ!」と言われたり、応援してくれたりする人が多くて驚きましたね。でも街中は路面が悪かったり、レールの角度もバラバラだったりするので、滑るのは簡単ではありません。ただ、そうした予定調和でないところが大会と似ているので、街中で思い通りの滑りができるとプレッシャーにも強くなるという利点があります。

 ストリートの文化が世の中の流行になることも多く、その代表が音楽とファッションです。特にファッションはスケボースタイルに関係してくるほど大事なものなんですよ。僕は少し太めのズボンにパーカーを合わせるシンプルな服装が好きですね。

 米国はスケートボード人口も多く、世界中からプロスケーターやこれからの活躍が期待される実力者が集まってきます。僕も競技を始めた時から米国でプロになるのが夢でした。トッププロスケーターから刺激をもらえる環境だと、頑張ろうという気持ちになりますね。ただ、本場で成功するためには、人と違うことをして目立たなければならないので、オリジナル性がとても重要です。また、プロとして活躍するために映像制作は必須で、その再生数などがスポンサー獲得に直結します。米国では大変なことも多いですが、チャレンジングな毎日を過ごせています。

イメージ向上と普及に欠かせない五輪での活躍

子どもたちから憧れられるスケーターになり、競技を普及させるためにも五輪での活躍が不可欠だ 【写真は共同】

 最近、日本でもスケートボードが流行っているという実感があります。僕のSNSにも「このトリックはどうやったらできるんですか?」とか「どのボードを買ったらいいですか?」という質問が届きます。ただ、日本ではまだスケートボードにあまりいいイメージを持っていない人も多いのが現状です。スケーターのマナーは以前に比べてよくなってきていますし、競技を通してよいイメージを持ってもらいたいですね。競技普及のためにも、五輪で結果を出すことで認められたいです。日本でもスケートパークをどんどん作りたいですし。

 僕がスケートボードを始めた頃は、五輪競技になるなんて夢にも思っていませんでした。なので、頭の中には五輪出場のイメージがまったくありませんでした。でもコンテストで勝ってプロとして活動していく中で、五輪出場を現実的な目標として捉えられるようになりました。メディアに出させてもらう機会も増えたり、新たな企業がスポンサーとしてサポートしていただけたりすることで、すでに五輪の大きさを感じる瞬間が多々ありますね。

 スケートボードの大会はスケーターにしか知られていないけど、五輪は誰もが注目するイベントなので、競技に興味がない方にも見てもらえます。さらに活躍できれば、新しいスケーターも増えて競技のイメージ向上と普及にもつながると思っています。

 自国開催の五輪は一生に一度あるかないかです。今は絶好のチャンスなので、本当に出場したいと思っています。コロナ禍で延期になりましたが、練習する時間が増え、映像もじっくり撮影することができ、この1年をすごく有意義に過ごすことができました。東京五輪には一番いい状態で臨みたいです。自分のベストの滑りができれば、金メダルも取れると確信しています。

(取材・執筆:上田まりえ)

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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