紀平梨花「今回跳ばないと次へ進めない」 4回転サルコウは一年間の努力の結晶

沢田聡子

4回転を跳ばない選択肢はなかった

「今回は、(4回転サルコウを)やらないという選択肢はほとんど私の中にはなかった」とフリー後に振り返った紀平 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 約10カ月ぶりの試合となったこの全日本に臨むにあたり、紀平はフリーでの4回転サルコウへの挑戦の前提として、ショートをミスせず終えることを挙げていた。演技をまとめて首位に立ったショート後、紀平は二日後のフリーで4回転に挑む覚悟を口にしている。

「やはりオフシーズンで頑張ってきたのは4回転サルコウでもありますし、4回転のためにトレーニングをたくさん積んできましたので、そのトレーニングの成果が出ればいいなと思う。できるだけ挑戦するかたちで、明日・明後日の練習を励もうと思っていますし、まず疲れをとっていい感覚の状態をフリーに持っていけたらいい」(紀平)

「今回は、やらないという選択肢はほとんど私の中にはなかった」とフリー後に振り返った紀平を後押ししたものは、拠点を移した海外でコロナ禍に見舞われる難しい状況下で積んできた努力だった。

 長い道程の末にようやくたどり着いた4回転サルコウの成功について、紀平は「決まって、一歩進めたなという気はしています」としている。4回転に続いて跳んだトリプルアクセルも回転不足判定ながら降りたことで、紀平は確かに一つ上の段階に進んだといえるだろう。しかし、フリー後の紀平は課題も口にする冷静さを見せた。

「まだまだ私の中では大きなミスがたくさんあったので、そこを修正しないと点数は伸びてこないと思う。結構『減点されるな』と自分でも思うジャンプがたくさんありましたので、そこを修正したい」

 跳ぶと痛みを感じたという3回転ルッツを構成から外したことも含め、紀平はフリーの点数を10点程度上積みできると考えている。

来年3月にスウェーデン(ストックホルム)で開催される予定の世界選手権代表に選ばれた紀平 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 全日本選手権を連覇し、来年3月にスウェーデン(ストックホルム)で開催される予定の世界選手権代表に選ばれた紀平は、会見で昨季立てなかった大舞台への決意を語った。

「世界選手権代表に選んでいただきましたが、今年は開催がされなくて、今までずっと試合がなかった。地道に積んできた練習とトレーニングの成果が、今回全日本選手権で発揮できたなと思いますが、まだまだ課題もあって。ショートにもフリーにも、自分の中での大きなミスがたくさんあったと思う。点数は出していただけたんですけど、修正できるポイントはすごくたくさんある。世界選手権が開催されたら、ショート・フリーともに修正できるところはすべて修正して、ロシアの選手とも戦っていけるようなもっともっと高い点数を目指して、頑張っていきたいなと思います」

 着実に進んできた結果として新たな武器・4回転サルコウを手に入れた紀平は、さらなる高みを目指して進んでいく。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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