可視化して振り返る2020年ドラフト会議 各球団の「穴」は埋まったのか?

ベースボール・タイムズ
 2020年のプロ野球ドラフト会議が10月26日に行われ、支配下で昨年と同じ計74名(育成は計49名)が指名された。コロナ禍で異例のドラフト戦線となった中、運命の日を経て、チームが抱えていた“穴”は果たして埋まったのか。各球団の現有戦力を年齢層別に「右投手」、「左投手」、「捕手」、「内野手」、「外野手」のポジションに分け、その指名が的確だったのかを振り返り、評価したい。

(注)在籍選手は2020年10月26日現在で引退表明選手および育成選手、外国人枠の選手を除く。選手の年齢は2021年4月1日時点で分布。

ソフトバンク:独自路線を貫き、支配下全員が高校生!

【ベースボール・タイムズ】

 1位抽選で佐藤輝明(近畿大)を外した後、井上朋也(花咲徳栄高)、笹川吉康(横浜商高)、牧原巧汰(日大藤沢高)、川原田純平(青森山田高)と高校生野手を連続指名。豊富な現有戦力を抱えている中で、高齢化が顕著な野手陣の若返りを図った。支配下で即戦力の大学生、社会人の指名がなかったことに関しては是非があるだろうが、強打の内野手に加え、捕手、外野手も加えたことは、チームの編成上の穴を的確に埋めるものだった。

 できることならば佐藤が欲しかったところだが、将来性重視の一貫した指名は、球団としての育成力に対する自信の表れであり、チーム作りの大事な柱を改めて宣言するものだった。来季への効果は少なくとも、数年後に大きな成果が出ることを期待しながら待とう。

ロッテ:欲していた左腕&2位・中森は◎も……

【ベースボール・タイムズ】

 相思相愛と伝えられていた早川隆久(早稲田大)のくじは外したが、同じ東京六大学の左腕・鈴木昭汰(法政大)の交渉権獲得に成功。さらに2位で高校球界のスター右腕・中森俊介(明石商高)の指名に成功。2位で中森が獲れたことはラッキーだっただろう。3位以下では好守の遊撃手・小川龍成(国学院大)、長身右腕の河合説人(星槎道都大)と続き、5位で高校通算55本塁打の右の強打者・西川僚祐(東海大相模高)を指名。チームの第一課題だった左腕を獲得し、将来性豊かな高校生を指名できたことは好印象だ。

 ただ、支配下5人はやや少なく、支配下での捕手指名は0人。育成1位で指名した捕手・谷川唯人(立正大湘南高)の成長を期待したが、できることなら支配下で高校生捕手を1人、さらに高校生左腕を加えておけば年齢分布的な穴を埋められたのだが……。

西武:チームの課題、長距離砲&ローテ左腕を確保!

【ベースボール・タイムズ】

 早川のくじを外した後、体重115キロの巨漢スラッガーの渡部健人(桐蔭横浜大)をサプライズと言える1位指名。中村剛也、山川穂高に続く和製大砲として育てたいという心意気が見えた。そして2位では社会人No.1左腕・佐々木健(NTT東日本)を指名し、左腕不足のチームに貴重な戦力を加えた上で、3位で天性の長打力とバットコントロールを持つ山村崇嘉(東海大相模高)を確保できたのは大きい。

 準硬式の速球派右腕・大曲錬(福岡大)も楽しみだが、捕手の指名は育成を含めて0人。チームの年齢分布的には高校生左腕を加えておきたかったが、指名はかなわなかった。チームの課題であった長距離砲と左の先発ローテ候補は確保したが、まだまだ埋める穴は残っていると言えるだろう。

楽天:早川ら即戦力投手を一挙獲得も、長期的には……

【ベースボール・タイムズ】

 石井一久GMが「黄金の左手」で、今ドラフトの目玉だった早川の当たりくじを引き当てると、2位で大学生右腕の高田孝一(法政大)、3位で社会人左腕の藤井聖(ENEOS)と即戦力投手を指名。新人王最有力の早川だけでなく、高田、藤井も1年目から先発ローテ入りできる能力を持っており、一気に投手陣の層が厚くなった。

 しかし、チームの年齢分布を見ると、19歳から21歳の層が明らかに不足していた。その穴を埋めるためには今ドラフトでの高校生の大量指名が必要だったが、ふたを開けてみれば5位と6位で指名した2人のみ。来季の戦いに向けては大きな期待を持てるが、長期的な目で見ると、将来の4番候補の不在も含め、足りない部分がまだまだ多く残されることになったのではないか。

日本ハム:1位・伊藤から狙い通りの指名!

【ベースボール・タイムズ】

 剛球右腕・伊藤大海(苫小牧駒澤大)の交渉権を無事に獲得し、さらにウェーバー順も生かして2位でスピードスターの外野手・五十幡亮汰(中央大)の指名に成功。この2人だけでも大満足と言えるが、さらに3位で強打の捕手・古川裕大(上武大)を確保し、4位で内外野可能なセンス抜群の細川凌平(智弁和歌山高)を指名。5位で高校生左腕の根本悠楓(苫小牧中央高)、6位で社会人の実力者・今川優馬(JFE東日本)を指名し、ポスト・西川遥輝を意識しながら的確にチームの穴を埋めた。

 できれば高校生捕手が欲しかったが、地元育ちの道産子を3名指名(伊藤、根本、今川)した点が好印象。地域密着を図りながら、実力的にも、チーム内の年齢分布的にも、満点に近いドラフトだったと言えるだろう。

オリックス:将来性豊かな上位3人への期待大!

【ベースボール・タイムズ】

 佐藤のくじは外したが、すぐに気持ちを切り替え、特大のポテンシャルを秘める大型右腕・山下舜平大(福岡大大濠高)を1位指名した後、2位で元謙太(中京学院大中京高)、3位で来田涼斗(明石商高)と、スター性のある高校生野手の指名に成功。近い将来、この3人がチームを背負う日が来れば、今年のドラフトは大成功であり、その期待と可能性を十分に感じさせる有意義な指名となった。

 さらに4位の中川颯(立教大)はハマれば面白いサブマリン右腕で、5位の中川拓真(豊橋中央高)はチームの年齢バランスを考えても的確な指名。ただ、左腕の指名がなかった点が残念(※育成では高校生左腕を1人指名)で、現チームに刺激を与えられる即戦力も少なかった。昨年1位の宮城大弥の成長を待ちながら、来年のドラフトでは左腕の層を厚くしたい。

<次ページでセ・リーグ各球団の「穴埋め」を可視化>

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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