「色は付けない」未来思う“引き算”の指導 ジャイアンツアカデミーは雰囲気を大切に
昭和から平成にかけ巨人の主力として活躍し、2006年からは再び巨人のユニホームを着て2軍監督や1軍ヘッドコーチなどを歴任した岡崎郁さん。現在はジャイアンツアカデミーの校長を務める 【撮影:竹内友尉】
読売巨人軍が、園児と小学生を対象に都内で開く「ジャイアンツアカデミー」。グラウンドに入る前にはコーチも子どもたちもまず消毒を行う。グラウンドに入ってからは置かれた目印に従って子どもたちは行動し、1カ所に密集することはない。さらに練習の合間には、マスク姿のコーチたちから手のひらに消毒液が吹きかけられる。子どもたちの笑顔を守るためには、安全への妥協は許されない。
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予想に反し、来てくれた生徒たち
「安全に配慮することを前提に、今はほぼ通常通りに進められています」
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、直営の14スクールを休講にしたのが3月。先が見えない状況で、再開に向けた感染予防対策やスクールの方向性をコーチや職員たちと改めて共有した。逐一、保護者らに考えを発信。世の中の感染状況を注視しつつ、ようやく6月になって再開の決断をした。
「最初は再開してもほとんど子どもたちは来ないと思っていました」
屋外での教室とはいえ、全く不安がないとは言えない。そう思う保護者がいるのは自然だとも思った。だが、そんな予想に反してほとんどの受講者が教室に戻ってきた。「練習をする以前に、感染者を出さないこと。そんなわれわれの思いや取り組みが、保護者の方々に理解してもらえたのかと」。信頼を得たのと同時に、その空間を守る責務に背筋が伸びる。
子どもたちの育成と野球界のすそ野を広げるために2006年から始まり、15年目を迎えたアカデミー事業。年中・年長の幼児コースから小学生の1・2年生コース、3・4年生コース、5・6年生コースまで4つに分かれている。世代に合わせた指導に加え、単に野球の技術を教えるだけではない存在意義を、担い手たちも理解して続けてきた。友達への思いやりや、集団生活でのルール。「キャッチボールはひとりじゃできない。相手がいてこそ。それが野球の基本です」。
子どもへの指導に大切な「根気」
練習中は子どもたちの動きに目を配り、これをしたらダメというものを回避させてあげたいと岡崎さんは語る 【撮影:竹内友尉】
「指導するということは、根気が必要です。もっとわかりやすい方法を、常に勉強していかないといけません」
プロ野球の世界で指導者の立場に長年いた岡崎さんは、実感を込めて言う。
昭和から平成にかけ巨人の主力として活躍し、1996年に引退。解説者を経て、2006年からは再び巨人のユニホームを着て2軍監督や1軍ヘッドコーチなどを10年間務めた。「プロ野球の選手は、1言えば3わかる。もっといい選手は、1言ったら10わかっちゃう。でも、子どもたちはそういうわけにはいかない」。全くの別物。その分、奥が深くて面白い。
理詰めで難しい言葉を並べても、かえって興味をなくすだけ。「最終的にはやって見せるということ。子どもというのは、しっかり見ていますから。見て、まねをして、覚えていく。それがひとつのヒントかなと思っています」。より直感的に、よりかみほぐして伝えることが、子どもたちの理解への近道になる。
ゴロの捕球ひとつにしたってそう。「足を開いて腰を落とし、正面にグラブを出して、ボールが入ったらもう片方の手でかぶせる」。なんて言っても、園児はちんぷんかんぷん。そんな時は、こう言ってみる。
「足はパー。お尻を半分くらい下げて、両手でワニさんの口がパクッとするように」
ボールを投げる動作だって、伝え方ひとつ。「頭をトントンして、クルッと」。ボールを持った手を頭まで持ってくれば、自然と肘が上がってテークバックに入る。そのまま腰をクルッと回転させれば、その勢いで手からボールが放たれるというわけだ。