競技歴4年でサクラセブンズの中心に 大竹風美子はプロラグビー選手を目指す
大竹が目指すのは「女子ラグビーを広めること」
「女子ラグビーを広めるために、できることを全てやりたい」と夢を語る 【斉藤健仁】
女子のラグビー選手は、企業チームが数多くある男子と違い、代表クラスの選手でないとなかなかラグビーでの就職が決まらないのが現状だ。大竹もJOC(日本オリンピック委員会)が始めた、企業とトップアスリートをマッチングする就職支援制度「アスナビ」に登録し、当初は働きながらラグビーを続けようかと考えていた時期もあった。
ただ男子の元日本代表フルバック(FB)五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)や、陸上の十種競技で日本王者に輝いたこともあるタレントの武井壮さんの本を読んだり、さらに15年、19年のラグビーワールドカップで活躍したスクラムハーフ(SH)田中史朗(キヤノンイーグルス)が積極的に子どもたちにラグビーを普及する活動を目の当たりにしたことが、大竹の心を変えた。それに加えて19年ワールドカップでベスト8入りした男子15人制日本代表の活躍や、他国の代表選手が台風19号の被災地で積極的にボランティアする姿が話題となり、ラグビーの価値を高めてくれたことも背中を押した。そして大竹はプロ選手になる意志を固め、「アスナビ」の登録も解除したという。
「働きながらラグビーをすると、コンディションの面とかで大変になりますし、大学卒業後はよりいっそうラグビーを一生懸命したいと思いました。またプロ選手としてアスリートの価値を高めながら、女子ラグビーを広めるために自分ができることを全てやりたいと思っています」
3年前、日本代表チームに入ったときは、最年少やそれに近い年齢だった。持ち前の明るい性格から「ボジティブリーダー」として、トレーニング中や移動時の音楽の選定などを任されていた時もあった。今は大学4年生となり、代表歴も4年目。すっかり中堅選手となり、チームの中心の1人へと成長した。
リオデジャネイロ五輪のサクラセブンズは、10位と結果を出すことができなかった。東京五輪でメダルを獲得するために必要なことについて、大竹は「いろいろありますが、一番大事なのは結束力です」と語気を強める。「チームには高校生の選手もいたり、30歳の社会人もいたりします。年齢差で壁が生まれちゃうので、そういうのをなくしたら本当のチームになれる」と大竹も年齢に関係なく、いろんな選手と積極的にコミュニケーションするように心がけている。
また、最近、大竹個人としては「自分の強みを再認識した」と話す。ウイング(WTB)として出場する機会の多い大竹は、ラグビーを始めた頃は「ボールを持ったら思いっきり走っていいと言われて、純粋に楽しかったですね!」と当時を振り返った。ただ、昨年は「戦術も表現することは難しいですが理解することができるようになり、プレーに迷いが生じてしまいました」と明かす。現在では「プレーの幅は広がりましたが、迷ったら自分のいいところが出ない。ランで前に出て、強く当たってチームを前に出す」と、陸上で培ったフィジカルとランを武器に、原点に戻っている。
心も体も、一人前のラグビー選手に
「延期となった東京五輪は特別な大会になると思いますし、世界平和を祈りながら、見ている人に感動と勇気を与えたい。そして日の丸を背負って、自分の力を出し切ってチームの勝利に貢献したい」
日体大でラグビー選手として心身ともに成長し、プロ選手として新たなキャリアを積むことを心に決めた大竹は、1年後の東京五輪に向けて真っ直ぐに走っていく。