桐蔭学園を優勝に導いた“修正能力” ラグビー元日本代表・藤井淳が解説

構成:スポーツナビ
 全国高校ラグビー大会は7日に決勝戦が行われ、桐蔭学園(神奈川)が御所実(奈良)を23対14で破り、初の単独優勝に輝いた。桐蔭学園は春の選抜、夏の7人制に続いて3冠を達成。
 前半を3対14とリードされた桐蔭学園はなぜ逆転することができたのか? 元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。

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前半と後半で戦い方を変えた桐蔭学園

豪快な突破と巧みなオフロードパスで勝利に貢献した桐蔭学園LO青木恵斗(写真中央) 【写真は共同】

――桐蔭学園の優勝となりましたが、勝敗を分けたポイントは?

 両チームともに高校生らしからぬ精度の高いプレーを見せていましたが、前半と後半で流れが大きく変わりました。
 桐蔭学園は前半はSOの伊藤大祐選手がキックを多用していましたが、リズムに乗ることができませんでした。御所実は伊藤選手のキックを警戒して、後ろに残る選手を多く配置していたのですが、桐蔭学園はそこに蹴ってしまっていたので。

 しかし、桐蔭学園はハーフタイムにゲームプランを変えて、ボールポゼッションを重視して連続攻撃を増やしました。この変更によって桐蔭学園が流れを引き寄せました。考え方を変えて、それを実行できる修正能力の高さが素晴らしかったです。

――桐蔭学園は後半3分という早い時間帯にSHを亀井健人選手から島本陽太選手に代えました。

 前半は御所実が桐蔭学園のSHにプレッシャーをかけていて、そのプランがハマっていました。桐蔭学園がラインアウトから早くボールを出そうとする際も、SHからSOへのパスコースに入っていたので、亀井選手は投げにくそうにしていました。

 後半の早い時間に島本選手に代わって、そこから桐蔭学園は非常に良い流れになりましたが、これは彼ら2人の実力に大きな違いがあるわけではなく、チームとして戦い方を変えたことが奏功したのだと思います。後半はラインアウトからも一度モールにしてから出すなど、SHが動きやすい形になっていました。このあたりは両チームともにレベルの高い駆け引きが行われていたと感じました。

 また、私もSHで途中から出ることが多かったのですが、後半の早い時間帯から出られると気持ちが乗ってプレーすることができます。グラウンドの外から相手の戦い方を見て対策を立てられますし、出場時間があまりに短いとプレーの選択肢が少なくなりますが、早い時間帯の出場なら思い切ってプレーできるので。きっと、島本選手も「やってやろう!」と盛り上がった状態で出て、前向きにプレーできたのではないかと思います。
 途中交代になった亀井選手もマークされている中で良いさばきをしていて、非常にレベルが高い選手でした。

後半は無得点に抑えられた御所実

試合後、御所実・津村大志(左)と抱き合う島田彪雅 【写真は共同】

――前半は御所実が得意のモールでトライを取りましたが、後半はモールを組んでもトライには届きませんでした。

 前半4分のトライはゴール前6〜7メートルほどの位置のラインアウトモールでしたが、ここで御所実は通常より少ない4人で並んで、普段はSHがいる位置にFWの選手を置きました。この作戦によってモールの土台をしっかり作って、動き出してからは一気にゴールラインまで進みました。非常にうまいモールだったと思います。

 御所実はこのトライをSHの稲葉聖馬選手が決めたように、SHがモールに入ることが多いです。そこで桐蔭学園は稲葉選手が入った時はBKへの展開はないと判断してモールディフェンスに人数をかけて対抗しました。さらに長身選手がモールを割って上からボールを持っている選手を狙ったことで、御所実はラックに切り替えるシーンもありました。桐蔭学園はアタックだけではなく、ディフェンスでも試合中にうまく切り替えたと思います。

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