南野移籍を最初に報じた高級紙タイムズ タブロイドも注目、英メディア信頼度は?
『タイムズ』や『デーリー・テレグラフ』など英高級紙の情報は、やはり信ぴょう性が高い。南野のリバプール移籍を最初に報じたのも『タイムズ』だった 【Getty Images】
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倫理上、放送局に飛ばし記事はほぼない
選手の移籍について、よく耳にするのがこのフレーズだ。契約直前のタイミングで、クラブ側が異なる選手にターゲットを切り替えたり、あるいは選手側が心変わりすることもある。まさに、刻一刻と変わる山の天気のようだ。
報道機関にとって、状況が日々変化する移籍交渉を追いかけるのは非常に難易度の高い仕事だ。彼らは水面下で進む交渉を手探りで追いかけ、クラブに出入りしたり、代理人や関係者とのコネクションを駆使したりしながら、スクープ記事をすっぱ抜こうとするのだ。
だが、インターネットの普及に伴い、真偽不明の怪しい移籍報道も増えた。ネット配信記事で重要になるのがヒット数。それゆえ飛ばし記事や、海外記事の翻訳で閲覧数を稼ごうとする風潮も目立ち始めている。
さて、イングランドの報道機関は大きく分けて3つ。1つ目の「放送局」は倫理上、飛ばし記事の作成やねつ造をほぼ行わない。最も信用できるメディアと言える。
2つ目の「高級紙」も信ぴょう性は高い。当然、紙面には政治や経済などさまざまなニュースが掲載されており、スポーツ欄はその中の1つに過ぎない。そこで適当なことばかりを書いていれば、新聞そのものの信用にも関わってくる。高級紙が移籍の可能性を報じる時は、何かしらの情報をつかんでいると見てよい。
そして、3つ目の「タブロイド紙」には最も注意が必要だ。記事は芸能ゴシップがほとんどで、その流れでスポーツ記事も掲載されている。紙面構成はインパクトとエンターテインメント性を重視。記者も、飛ばし記事の作成に慣れている印象がある。受け手の読者も話半分なのは承知の上で、暇な時にパッと手に取り、サッと読み捨てるイメージだ。
ただし、タブロイド紙とはいえ、『サン』や『デーリー・ミラー』がそうであるように、ときに特大スクープを放つこともある。彼らにも独自のネットワークがあり、まったく信用できないというわけではない。
以下、イングランドの主な報道機関の立ち位置や特性、情報の信頼性などまとめた。移籍報道に触れる際、参考にしてもらえれば幸いだ。
「訴えられない記事の書き方」をたたき込まれ
労働者階級の男性が好むような構成で、飛ばし記事も多い英タブロイド紙だが、『サン』などはときに“特大ホームラン”を放つので、軽視はできない 【スポーツナビ】
■サン
移籍情報の信ぴょう性:★★☆☆☆(2)
英タブロイド紙の決定版。1964年創刊と歴史は意外に浅いが、発行部数は英国最多の120万部を誇る。
紙面は、芸能ゴシップ、半裸女性の写真、サッカー、競馬と、労働者階級の男性が好むような記事のオンパレード。手段を選ばない“行き過ぎた”取材姿勢が問題になることも多く、かつては政治家や有名人の携帯電話の盗聴が日常茶飯事だった(※盗聴が明るみとなり、日曜版の『ニュース・オブ・ザ・ワールド』が2011年に廃刊。だが翌年には『サン・オン・サンデー』と名前を変えて復活させている)。
おとり取材も『サン』の得意技だ。近年はSNSを常時パトロールし、目立った投稿があれば自社サイトで即記事にしている。レストランやナイトクラブの警備員と結託し、セレブや有名選手の来店時には連絡するようにと指示。成功報酬の形で協力費を渡すこともある。「○○選手が早朝4時までバーで酒を飲んでいた」といった類の記事が世に出るのはそのためだ。
ちなみに、入社時には「訴えられない記事の書き方」を徹底的にたたき込まれるという。そういった意味では、飛ばし記事にも彼らなりの本気度が伝わってくる。
移籍情報に関しても中身の真偽は脇に置いて、とにかく多くのニュースを発信することと、記事としての面白さやインパクトを重視している。明らかな飛ばし記事や、編集局で裏を取っていない海外記事の翻訳も多く、全体として見ると移籍情報の信ぴょう性は高くない。
とはいえ、独自取材にも力を入れており、半年〜1年に一度のペースで特大ホームラン(大スクープ)、1〜3カ月の頻度でクリーンヒット(スクープ)を飛ばすので、一概に軽視はできない。
ただし、1989年に起きた“ヒルズボロの悲劇”(注:1989年4月15日にシェフィールドのヒルズボロ・スタジアムで行われたFAカップ準決勝、リバプール対ノッティンガム・フォレスト戦で発生した群集事故。死者96人、重軽傷者766人を出す大惨事に)にまつわる報道をめぐり、同紙は2017年からリバプールへの取材が完全NGとなっている。
■デーリー・ミラー
移籍情報の信ぴょう性:★★☆☆☆(2)
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