偉大なキャリアに幕を下ろしたコンパニ 監督として歩む、新たな挑戦

エルゴラッソ

連覇を手繰り寄せた、運命のスーパーミドル

18-19シーズンのレスター戦、コンパニが唯一決めたエリア外からのミドルシュートは、シティの優勝を後押しするゴールとなった 【Getty Images】

 そんなコンパニの輝かしいキャリアを語る上で欠かせないのが、シティでのラストイヤーとなった18-19シーズンのレスター戦でのゴールだろう。前年に勝ち点100と圧倒的な強さでリーグ優勝を果たしていたシティは、2連覇がかかる重要なシーズンだった。

 シティは開幕からディフェンディングチャンピオンとしての強さを見せつけていたが、クロップ監督率いるリヴァプールが負けじと追走する。この2チームが抜け出し、1試合ごとに首位が入れ替わるほどの互角の争いがシーズン最終盤まで続けられた。

 そんなデッドヒートを繰り広げる中、最終節を前にした第37節に大きなドラマが待っていた。この節、先に試合を終え勝利を収めたリヴァプールが、シティとの勝ち点差2をつけて暫定首位となっていた。そのため、シティはこの試合での勝利が優勝へ向けての必須条件だった。

 シティが対する相手は、監督交代で復調を見せていたレスター・シティ。迎えた試合は、拮抗(きっこう)した展開となり、後半に入ってもスコアレスの状況が続く苦しい展開。そんなシティに不穏な空気が流れかけた70分、その瞬間が訪れる。ボールを受け取ったコンパニが、突如エリア外から強烈なロングシュートを放ったのだ。

 この瞬間、コンパニはシュートが苦手ということもあり、FWセルヒオ・アグエロは「やめろ!打つな!」と叫び、グアルディオラ監督も同様に「シュートを打つなヴィニー、打つな!」と叫んだそうだ。

 しかし、味方すら天を仰いだそのシュートは。なんと完璧なコースでゴールネット上隅に突き刺さったのだ。驚くことに、コンパニはエリア外からのシュートはこれがキャリア初だった。


 その唯一の一撃をこの重要な局面でゴールに沈めたのである。まぐれでは片付けられない、あまりにも運命的な出来事に誰もが驚嘆した。結果としてこのゴールが決勝点となりシティは1-0で勝利を収め、首位を奪還することに成功する。そして、その勢いのまま最終節も勝利し、シティはプレミア連覇を達成したのだ。

 コンパニはシティから退団する際に、イギリス『BBC』で「レスター戦のあのシュートが“トップビン”(ゴール上隅)に決まった瞬間、自分は全てやり遂げた。もうこれ以上のことはできないと分かったよ」と述べており、このゴールがシティを去る決断をした理由となったことを明かしている。

 最後の最後に大仕事を成し遂げ、シティのレジェンドとしてクラブを去った彼の勇姿は今後も長く語り継がれることだろう。

監督としての新たな挑戦

 今回のコンパニの引退発表を受け、同胞のベルギー代表GKティボー・クルトワは「貢献とリーダーシップに感謝しています。キャプテン。あなたの後ろでプレーできて光栄でした。グッドラック」とTwitterでコメント。
 同じくベルギー代表で。シティでもチームメートだったMFケビン・デブライネも「幸せな引退になることを祈っています。海外で奮闘するベルギー人の多くはあなたのお世話になりましたしね。本当に素晴らしい男だった」と、コンパニへねぎらいのメッセージを送っている。
 コンパニは昨年、選手兼任監督として古巣アンデルレヒトへ戻ったが、約3カ月後にプレーに専念するために監督から離れ選手としてシーズンを戦っていた。今回の現役引退はその監督業に専念するために決断したものであると、クラブの公式ウェブサイトで語っている。

 17年にはマンチェスターのビジネススクールを卒業し、MBAを取得するなど、頭脳明晰(めいせき)な一面もあるコンパニは、果たして監督としてどのような道を歩んでいくのだろうか。いつの日か監督としてマンチェスターに帰ってくることを、きっとシティのファンは夢見ているはずだ。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。

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