「ピンチをチャンスに変えた」2カ月間 高橋宏斗が家族の思いを乗せ、いざ甲子園へ
家族の夢、春のセンバツ甲子園が中止に……
兄・伶介(右)に憧れ続けてきた弟・宏斗(左)。コロナ自粛期間中、7年ぶりに一つ屋根の下で暮らした兄弟は初めて真剣に野球の話をしたという 【写真提供:高橋伶介】
次は、兄が成し遂げられなかった甲子園。「甲子園でも優勝!」「甲子園で155キロ」そんな目標を掲げた宏斗に、年末年始に帰省した伶介がこんな声をかけた。
「夏に155キロ出すことを目指すなら、気持ちの持ち方を考えてやっていけよ!」と。
それに対し宏斗は、いつものように「おぉ」と、聞いているのか聞いていないのか分からないような返事をしていたそうだが、「まずは春のセンバツで実力を試す」という明確な目標に向け、より熱心に冬場のトレーニングに取り組むようになった。
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「悔しかったです。自分もそうですが、甲子園のマウンドに立つことを家族がとても楽しみにしてくれていたので。でも、(中止は)ある程度、覚悟できていました。世の中の情勢を見たら、仕方ないことだなって。兄からも『まだ夏があるぞ』って連絡が来て、『夏の甲子園に出て絶対日本一になるぞ』って気持ちを切り替えました」(宏斗)
そこから感染拡大の状況はさらに悪化し、学校が休校となり、野球部の全体練習も行えないという非常事態に突入していく。
そんなとき、慶応義塾大を卒業し、4月から大阪での新社会人生活が始まる予定だった伶介が名古屋の実家に帰ってきた。こちらも新型コロナの影響で、4、5月の2カ月間、在宅でのリモート研修になったのだ。宏斗は小4のとき以来、兄と一緒に生活することになったのだが……これが宏斗を大きく進化させる機会になる。
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