連載:GIANTS with〜巨人軍の知られざる舞台裏〜

開幕前に感染者…批判受けても示した手本 「祭りを取り戻す」巨人社長が語る使命感

小西亮

巨人にはファンとともに歩んできた歴史がある

野球の本質は熱狂であり、「祭り」だと語る今村球団社長 【撮影:竹内友尉】

――7月には、コロナ対策も盛り込んだ100億円規模の東京ドームの改修を発表されました。

 空調や換気に絶えず注意を払っていかないといけないのは間違いありません。東京ドームの改修を発表させていただいた会見でも、これからは「熱狂声援型」から「快適体感型」になると言わせていただきました。ただ、野球の本質は熱狂だし、「祭り」なんです。なぜ、多くの人が球場やドームに来るのか。それは、みんな祭りに参加したい、興奮したいからです。

――確かに数万の人たちが同じ空間で喜びや感動をともにする瞬間は、何ものにも代え難い体験です。

 言うならば、「青森ねぶた祭」を毎日やっているようなものですよ。それってすてきなことじゃないですか? 新型コロナの特効薬やワクチンができれば、絶対に熱狂は戻ってくると思うし、そうしていかないとエンターテインメントにならないと思います。だから今は、熱狂を取り戻すための準備期間だと捉えています。もう一度、野球と自分との距離感を見つめ直したり、野球の歴史や本質を見つめ直したりするインターバルなのかなと。

――矢継ぎ早に対策を打ち出す球団の姿勢には、球界のリーダーとしての意識もあるように見えます。

 われわれが動くことは、影響力があると思っています。これまで巨人軍を築き上げてきてくださった先輩方に感謝しています。(前身の大日本東京野球倶楽部が設立された)1934年から始まり、86年。戦争を乗り越え、景気の浮沈も経験しながら存えてきました。そしてファンとともに歩んできた歴史がある。だからこそ、こんなコロナごときでやめるだとか、中断するだとかいうのは、少なくとも私が関係するところでは嫌だなと。それが巨人軍ってものだと思いますし、球界全体の一致した意見でもありました。

――コロナ禍において、球界をリードしていく巨人軍として真価が問われる時期でもあります。

 巨人軍というものは、野球に懸けているエネルギーや費やしている時間の長さ、深さ、重さというものが、全然違う。それを私は球団に入って改めて思いました。そして今、コロナと向き合い、どうしていくべきかをすごく考えています。世の中のエンターテインメントが止まっている状況で、逆に野球を多くの人々に刷り込むチャンスでもある。そのための種まきを、SNSを中心にやっているところです。

※リンク先は外部サイトの場合があります

今村司(いまむら・つかさ)プロフィール

1960(昭和35)年5月10日生まれ、60歳。神奈川・横須賀市出身。横須賀高、東大を経て85年に日本テレビ入社。プロ野球中継などに携わったほか「ザ!鉄腕!DASH!!」やドラマ「家政婦のミタ」といったヒット番組を世に送り出した。2015年から17年まで日本代表「侍ジャパン」の事業会社NPBエンタープライズで社長を務めた。19年6月に読売巨人軍代表取締役社長に就任。

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント