リヴァプール優勝の立役者 歴史に名を刻んだ偉大な主将ヘンダーソン

エルゴラッソ

FWAの年間最優秀選手賞に選出

 そんなクラブをリーグ優勝へ導いた主将としての活躍が認められたヘンダーソンは7月24日、イングランド・サッカー記者協会(FWA)の年間最優秀選手賞に選出された。今季のヘンダーソンはリーグ戦30試合に出場して4ゴール5アシストの成績を記録していたが、次点となったマンチェスターシティに所属するケヴィン・デ・ブライネも今季13ゴール20アシストと数字上では圧巻のパフォーマンスを見せていた。しかし、数字では表せないチームへの貢献度も高く評価されたことで、そのデ・ブライネを抑えての受賞へとつながった。ヘンダーソンにとっては嬉しい、初めての個人タイトルとなった。

 またヘンダーソンはピッチ外でもリーダーシップを発揮し、新型コロナウイルスの影響によるリーグ戦中断期間には、自ら先頭に立ち「PlayersTogether」という基金を立ち上げ、NHS(国民保健サービス)への支援活動に尽力するなど、1人の人間としても年間最優秀選手賞にふさわしい立派な行動を見せていた。

 結果、元イングランド代表であり、チームのOBでもあるピーター・クラウチ氏も自身のTwitterで、「ヘンダーソンが入団した時は『リバプールに加入できて幸運だ』と彼は感じていたようだけど、今は違う。ヘンダーソンが加入してくれたことは、リバプールにとって幸運なことだったね」と英国人らしいユーモアを交えて称賛している。

チームに欠かせない選手へと成長

優勝セレモニーでは遠慮がちに見守っていた南野拓実に声を掛け、トロフィーを掲げるよう促す場面があった 【Getty Images】

 しかし、こうした今の主将ヘンダーソンの姿は、決して一朝一夕で生まれたものではない。サンダーランドから加入した直後の数シーズンは、思うようなプレーを見せることができず、もがき苦しんでおり、放出候補として名前が挙がることもあった。そんな逆境の中でもヘンダーソンは折れることなく、より成長して自身の価値を証明するために人一倍トレーニングを重ねた。その努力の結果、徐々に監督、ファンからの信頼を獲得していき、そこからは瞬く間に不動の地位を築きチームに欠かせない選手へと成長を遂げたのだ。

 そしてスティーブン・ジェラードが退団した2015年からは、後任として主将に任命されることになる。偉大な先輩の後を務めるという重圧と戦う中で、キャプテンとしての自覚が芽生え、精神的にもタフに成長を重ねる中で現在のチームを束ねる存在へと変貌したのである。そのジェラードは、昨年リヴァプール がCLを制覇した際『The Times』の寄稿記事にて「ジョーダンのことを誇りに思う。プレッシャーに晒される中、彼がどれほどのハードワークをしてきたかを私は知っているからね」とヘンダーソンの主将としての姿勢を賞賛している。

 加入当初は21歳と若手だったヘンダーソンも今年30歳を迎え、キャリアの最盛期を過ごしている。長年抱えるかかとの怪我と向き合いながらも、キャプテンとしてピッチに立ち続けチームを優勝に導いた姿はまさに「YNWA(You’ll Never Walk Alone)」の精神を体現していたと言えるのではないだろうか。

 優勝セレモニーでは遠慮がちに見守っていた南野拓実に声を掛け、トロフィーを掲げるよう促す場面が日本で話題になっていたが、これも実にヘンダーソンらしい気遣いだ。このワンシーンからも彼がどのような人間であり、いかに優れたリーダーであるかが垣間見られる。リヴァプールに全てを捧げ、昨年のCL制覇に続きプレミア初優勝という偉業を成し遂げた主将ヘンダーソンを改めて称えたい。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。

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