連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

ベイスターズを彩る“スタグル”の理念 8月には横浜駅に店舗進出、その狙いは?

村瀬秀信

かつて“飲食”は大きな課題だった

話題のメニューを次々と出す、ハマスタのスタジアムグルメ。いまや名物の見本市といえる 【(C)YDB】

 カレーにから揚げ、ホットドッグ。メンチ、餃子、マグロ丼にチキンレッグ。
 
 さればスタジアムグルメの数多かれど、この横浜に勝るあらめや。

 なんてことが言えてしまう、このところのハマスタ(横浜スタジアム)のスタジアムグルメ。少し前には、寒い雨の日でもクチビルを紫にしながら「名物、名物」の題目とともにみかん氷を食べ、球団にお金を落とすためとポップコーンばかりを頬張り、石井琢朗いもフライに狂喜していたことを思えば、この時代のなんと贅沢なことか。

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 いまやハマスタは名物の見本市。思えば横浜ベイスターズから横浜DeNAベイスターズとなり、2016年1月に長年の願望であった球団とハマスタが一体経営となった際、“最重要課題”として大々的に見直されたのが“飲食”だった。

 ハマスタの飲食再建プロジェクトは当初、MD部というグッズを扱う部署と同一だった。そこから徐々に取り扱う商品が増え、メンバーが増えていくと、18年には球団に飲食部が独立している。この飲食プロジェクトに最初期から携わり、現在は同部署の部長を務める野田尚志氏は言う。

インタビューに答える飲食部長の野田氏 【スポーツナビ】

「球場との一体化経営を始める以前からハマスタの“コミュニティボールパーク”化構想はありますが、お客さまが来場してから帰るまでに、野球以外のことでも満足していただくためには、やはり飲食は大きな割合を持ちます。

 まずはハマスタで名物になるようなオリジナルの商品を作ろうと、15年9月にカレーの名店を集めて“B食祭”というイベントをやりました。そこで横須賀の若手選手寮で実際に選手に食べられている『青星寮カレー』を出店したのですが、予想以上の好評を得て大鍋がすぐに完売。“選手と同じものを食べられる”という特殊性と、ストーリー性が付加価値となり大ヒット商品となりました。ファンの皆さんに喜んでもらうとは、こういうことなんだなと、そこを契機により特別感のあるオリジナルの商品を企画していきました」

売り上げは、ほぼ落ちずに推移

オリジナルビール『BAYSTARS ALE』は発売以来、さまざまなフレーバーをリリースしている 【(C)YDB】

 大事なのはスペシャル感。ベイスターズは15年に、B食祭だけではなく野球飲食界を震撼させた球団初のオリジナル醸造ビール『BAYSTARS ALE(ベイスターズ・エール)』を8月に発売。フードでは16年にベイスターズドッグと青星寮カレーを先頭にベイカラが続くと、翌17年がベイメンチ。18年にベイ餃子が出て、19年には青星寮カレーパン、ベイマグロ丼、ベイチキンレッグが発表された。

 打てば響く食のマシンガン。括目すべきは、その売上だ。これらの新・名物グルメは、発売当初の売り上げを継続し、ほとんど売り上げが落ちていないのである。

「球団が作った特別なグルメだと販売すれば、極端な話をすると、美味しくなくても皆さん一度は食べていただけると思うんです。ただ『ああ、こんなもんだね』で終わっては、大した話題にもならずにリピートもしないですよね。長く愛してもらえる“名物”として楽しんでいただくためには、絶対的に美味しいことが条件になります。だから、味には徹底的にこだわり抜きました。

 毎年シーズン後半になると翌年の新メニューの開発を始めるのですが、毎週試作品を何個も作っては食べるを繰り返して、本当に美味しいものを突き詰めてきました」

 毎年新たに登場した新名物は、ハマスタのスタジアムグルメとして定着し、大成功と言っていいほどの成果を収めた。

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著者プロフィール

1975年8月29日生まれ、神奈川県茅ケ崎市出身。プロ野球とエンターテイメントをテーマにさまざまな雑誌へ寄稿。幼少の頃からの大洋・横浜ファン。

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