横浜ダービーだから…中町公祐は望む 先人の思い、歴史を背負って、熱い戦いを

元川悦子

マリノスレジェンドの中町公祐が横浜ダービーの見どころを語ってくれた 【スポーツナビ】

 7月22日に日産スタジアムで行われる横浜F・マリノスvs.横浜FCの一戦は、J1での13年ぶりの「横浜ダービー」となる。同じ横浜を本拠地とする両者が、長い年月を経て、最高峰のリーグ戦で激しくぶつかり合うのだから、まさに必見。注目度の高い一戦となるのは間違いないだろう。

 その横浜ダービーにひときわ、強い関心を抱くひとりが、マリノスレジェンドの中町公祐だ。2012年から同クラブで7シーズン戦い、選手会長も務めた頭脳派ボランチは18年限りで退団。アフリカへ赴き、19年夏から20年1月にかけてザンビアの強豪ゼスコユナイテッドFCでプレーした。

 現在は同じザンビアで新天地を探すべく臨戦態勢に入っているという。NPO法人「Pass on」の代表理事として、サッカーと医療でアフリカを支援する活動も並行して手掛ける多忙な中町に、横浜ダービーの注目ポイントを聞いた。

天野の成長を実感、キーマンはボランチ

ベルギーから復帰した天野純は随所に好プレーを披露。湘南戦では復帰早々に2ゴールを挙げた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――J1再開後の横浜F・マリノスをどう見ていますか?

 自分の経験則で言うと、2013年に天皇杯で優勝して、翌14年のACL(AFC チャンピオンズリーグ)出場権を得たときに、2チーム分の戦力を作らなければいけなくなったんです。ほぼ毎年ACLに出ている川崎フロンターレや鹿島アントラーズはそのやりくりに慣れているけど、マリノスは少し事情が違う。今年も当時と似たような難しさに直面しているように見受けられます。

 ポステコグルー監督は就任1年目だった18年の良さを生かしつつ、昨年は外国人選手をフィットさせながら、ある程度メンバーを固定して結果を出しました。僕自身も最初のシーズンは在籍していましたけど、戦術を浸透させ、選手個々の人柄を理解し、我慢強くチームを作り上げていた。その成果が昨年の15年ぶりのリーグ制覇につながったんだと思います。

 でも今年はイレギュラーな連戦で、かつACLもあるので、選手を入れ替えながら戦っているように見受けられます。12日のFC東京戦もテル(仲川輝人)と喜田(拓也)をベンチスタートにしてますよね。先発に慣れている選手は初めての経験に戸惑うでしょうし、気持ちを切り替えたり、メンタルバランスを整えるのが難しくなる。それが今の大変さなんだと感じます。

――そんななかでも、ベルギーから復帰した天野純選手は好調ですね。

 純は19年夏にベルギーへ赴きながら、道半ばでマリノスに復帰することになりましたよね。しかも、自分がいない間にチームが優勝した。だからこそ、『もう一回、自分の価値を証明するんだ』っていう思いが非常に強いんじゃないかなと思います。

 新型コロナウイルスの影響もあって、今のマリノスはランニングをする選手が少ない印象を受けるんですけど、純はスイッチが入っているし、彼の運動量がチームを活性化させている。ポステコグルー監督の課すタスクもしっかりとこなしていて、成長を感じます。

――昨年活躍したマルコス・ジュニオール、エリキ、エジガル・ジュニオの助っ人アタッカー陣は、まだ力を出し切れていないのではないですか?

 彼らのストロングポイントが生きたのが昨年のマリノス。外国人アタッカー陣の融合は僕自身も大いに着目している点です。テルを含めて前線の選手たちはもっとやれると思う。どこまで状態が上がってくるのかをダービーではしっかりチェックしたいですね。

――キーマンはアタッカー陣ですか?

 いや、僕的にはやっぱり喜田とタカ(扇原貴宏)。自分がボランチなんで、どうしてもそこに目が行ってしまうんです(笑)。

 4日の浦和レッズ戦ではふたりが高いポジションを取ってマリノスらしいサッカーを演出していた。普通のボランチだったらやらないスペースの空け方をしますし、そこを他の選手がカバーするような流動性ができている。ふたりのスケールアップを感じます。

 今のマリノスは『数的優位をどう作るか』というサッカーをしてますけど、サイドバックが内側に入ることでボランチ2枚が前に出れば、相手守備陣や中盤はそこに行かざるを得なくなる。敵を凌駕(りょうが)し、主導権を握る意味でもボランチの役割が非常に重要。喜田とタカの両ボランチがしっかり機能して相手を圧倒できれば、優位に試合を運べると思う。そろってプレーするところをぜひ見たいですね。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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