石川遼が独白、ゴルフ新時代の思い「新たな楽しみ方を見つけるチャンス」

北村収

オンラインで取材に応じた石川遼 【スポーツナビ】

 コロナ禍で今季日本での試合ができていない国内男子ゴルフツアーが、今週withコロナ時代の第一歩を踏み出す。

 7月9〜10日の2日間、「JGTO共催ゴルフパートナーエキシビショントーナメント」を開催。96名の選手が1人1台の電動カートか自らバッグを担いで歩くセルフプレーでソーシャルディスタンスを保ちながら、賞金総額2000万円をかけて戦う。

 昨年年間3勝を挙げ今季はさらなる活躍に期待がかかる石川遼選手に、オンラインでインタビューを実施。石川選手は熱く、そして一つひとつの言葉を丁寧に選びながら、久しぶりの試合にかける思いや自粛期間に考えていたことなどを話してくれた。新しい時代のゴルフへの思い、そしてファンとあらゆるゴルフ関係者への愛と感謝の気持ちにあふれた、今の石川遼に迫った。

日本のゴルフがどこにいるのか、すごく考えた

自粛期間はシーズンがいつ始まってもいいように、怪我をしない体作りのトレーニングをしていたという(写真は1月のSMBCシンガポールオープンのもの) 【写真は共同】

――自粛期間に取り組んできたことはありますか?

 まずは体調をしっかりと良い状態をキープし続けるということで、けがをしないようにしなくてはいけないなと思っていたので、体づくりを中心にやってきました。いつ再開してもいいように、試合になったらマックスでやることになるので。今までのシーズンよりも良いトレーニングができていると思います。

――自粛期間にスポーツの意味とか、スポーツ選手だからできることについて考えましたか?

 この期間、本当にそれは考えることがすごく多かったですね。自分が生きるゴルフという世界が社会的にどんな位置づけにあるスポーツなのかと、今回ある意味良くも悪くも実感をさせられました。

 僕はサッカーファンでもあるんですけど、サッカーの試合が毎週ずっと当たり前のようにやっていたのに、それが世界中どこでもやれてない、生のスポーツが見れなくなった時に、すごくポカンと自分の中で楽しみな時間が空いてしまいました。今までは当たり前のように、現地には行けなくてもタブレットとかで簡単に生放送が見られる時代になってスポーツを身近に感じていたんです。

 そういった(サッカーのように)世界的にも本当にメジャーなスポーツに対して、日本のゴルフがどこに今いるのかをすごく自分的には考えたところもあります。今でもやっぱり考えていますし。今回の「JGTO共催ゴルフパートナーエキシビショントーナメント」がファンの皆さんにとって、僕ら選手がプレーをすることがどういった意味があるのかということをしっかりと噛(か)みしめながら。やっぱり自分が大好きなスポーツなので、できれば自分が好きなことをやっている中で、ほかの人がそれを楽しみに見てくれたり、ゴルフはそういったスポーツであってほしいです。自分が頑張ることによってゴルフの価値を高めていけたらなと思います。

――JGTOオフィシャルサイトのインタビューの中で、「ソーシャルディスタンスは常にしっかりと保ちながら、低リスクなスポーツとしてのゴルフの楽しみ方を、僕ら選手から発信していけたらいい」と話していました。

 本当にそうだと思うんですよね。人との接触もそんなに多くありませんし、外で行われるスポーツですし。いろんな対策を講じているゴルフ場さんも今、全国で増えてきていて、ゴルフの敷居が良い意味で下がってくれればいいなって思っていて。もっと気軽に、そして短時間で100%楽しめるような、そういったシステムになってくれればいいなと思っています。

 世界中でゴルフの楽しみ方はけっこう違っていたりするんですけど、やっぱり日本式の昼食を1時間挟むという形は、世界でも少ない方だと思うんですね。今はより少ない人数でカートに乗ってスルーでラウンドしたり、日本もこれを機にゴルフの新たな楽しみ方を見つけるチャンスかなと思っています。コロナに関係なく日本でもそういったスタイルのゴルフ場はたくさんあるんですけど。ゴルフは僕らの試合もスルーですし、世界的にもスルーで回る文化が根付いているので、スルーで回った方が低リスク。一石二鳥でもあるのかなという風には思っています。

 今はバンカーのレーキを置いてないコースもありますが、そのコースで誰かの足跡にボールが入っちゃったらノーペナルティーで横に置いていいですよってローカルルールを新たに設けたりしていて、人ってその都度その都度、対応しながら今をどうやって快適に、今をどうやって楽しむかということをみんな頭を使って考えているので、これを機に日本のゴルフの楽しみ方もより違ったものがどんどん入ってきてもいいんじゃないかなと思いました。

――「JGTO共催ゴルフパートナーエキシビショントーナメント」では、まさに新たな取り組みというか、選手は1人1台の電動カートを使用するか、自らバッグを担いで歩くセルフプレーとなります。選手として新しいスタイルのプレーを見せたいみたいなところはあったりしますか?

 そうですね、やっぱり僕らにとってキャディーさんという存在は非常に大きくて、普段の試合では本当にキャディーさんに頼りっぱなしなんですね。エキシビション大会とはいえ2日間のストロークプレーで賞金もあります。試合になるわけですから、それをやはりキャディーという大切な存在抜きでやるっていうことは選手にとっては違和感以上の、結構苦しさとかもあると思います。今のこのwithコロナという中で、こういったエキシビション大会だからこそ、ゴルフの新たなやり方みたいなものをプロゴルファーも実践できる、実践しているということが、少しメッセージとしてゴルファーの皆さんに届くという可能性はあるかなと思っています。

 僕も何度もセルフプレーで、昔だけじゃなくて最近もゴルフをやっているんですけど、本当に自分でボールを拭くのが面倒くさくなっちゃったりとか(笑)、ホールが進むにつれて、クラブも溝にどんどん砂がたまっていったりとか、そういう風に性格も出ますし、結構心に余裕がなくなったりとか、難しいところはありますね。ただその半面、風の読みも自分だし、距離の判断も自分、クラブのジャッジも自分で、最終的に決めて打ってその責任も全部自分にありますので、自分としてはやっていてスッキリするというか……。もちろんキャディーさんといくら相談しても最終的に打つのは選手で、決めるのも選手なので選手の責任なんですけど、そこのモヤモヤ感が全くないというか、全部自分に降りかかってきてくれる感じがすごくスッキリする。ただ、完全セルフで試合となるとジュニアの時以来、10年以上ぶりになるのでどんな感じの自分になるんだろうというのは楽しみです。

松山英樹に「本当に感謝している」

松山英樹と新型コロナウイルスの感染拡大防止支援プロジェクトを立ち上げ、動画撮影にも取り組んだ(写真は2017年のもの) 【写真は共同】

――「松山英樹×石川遼プロジェクト」の動画では、松山プロとセルフでラウンドしていましたね。

 そうですね。特にあの時はバッグを担いで、カメラも自分で持って、2人でしゃべりながらまわって、セカンド地点の時にカメラを自分で好きなところに置いて打っていたんで、よりあの時の方が心には余裕はなかったんですけど(笑)。あの時よりはもしかしたら試合の方が自分のことに集中できるかもしれないですね。

――米国のチャリティーの試合では、タイガー・ウッズが1人でカートに乗ってラウンド、しかも雨が降っていましたが頻繁に自分でグリップを拭いていたのが印象的でした。また、ローリー・マキロイなどがセルフでバッグを担いでラウンドしているイベントもありました。

 世界のゴルフ界のトップの選手たちがそういった形で、ファンに何かを届けようと動き出すという時に、(松山)英樹から一緒に何かできないかと相談をもらって、声をかけてもらったということが本当に有難いことでした。英樹の強い意志を感じましたし、自分も大げさなことを言うつもりもないんですけど、ファンの皆さんに何か届けたいよねという話の中から、じゃあ2人でセルフプレーでもまわろうよ、担いでまわろうよという話になりました。本当に1人の人間と人間の間柄の話し合いができたので、僕ら2人がこれをやりたいってことに対して、まわりの人たちの理解を得られて、動き出せたということ、そこのフットワークが、世界のトップの選手たちは速かったなと思うので、そこに対して有難いことに英樹とこうやって動けたというのは、本当に感謝していますね。

――YouTubeを選んだのは自分たちの思いが一番伝えやすいメディアだからですか?

 そうですね。自分たちの伝え方で自分たちのやっていることを、手作り感だったり、いろんなうまくいかないこともあったりしながら、まずは一番一歩を早く踏み出せる方法を探ったという感じですね。

1/2ページ

著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント