テニス界の新たなロールモデルをーー 「BEAT COVID-19 OPEN」主催者の決意

内田暁

山根氏「大会設立のプロセスも見せることで、テニス界に一つの可能性を示すこともできた」 【スポーツナビ】

 大会の開幕が迫り、主催者たちは業務に追われる慌ただしい日々を過ごしている。

 参戦選手全員に施行されるPCR検査、スタッフらの役割に応じたゾーニングの管理、そして直前になり急激に増えた取材依頼への対応……。

 徹底した感染防止対策を取りながらの開催は手間も時間も要するが、新たなテニスイベントのロールモデルとなるためにも、妥協は絶対に許されない。

 また、山根氏がここまでのプロセスで何より嬉しく感じているのは、参戦が叶(かな)わなかった選手たちも、イベント成功のため協力してくれたこと。

 さらには、「BEAT COVID-19 OPEN」の動きに呼応するかのように、クラウドファンディングで運営する新たなイベントや普及の動きが、テニス界で次々と生まれたことだ。

「選手たちがソーシャルメディアなどを介して、自分たちの頑張る姿をファンに届けることができた。大会設立のプロセスも見せることで、テニス界に一つの可能性を示すこともできた。その時点で、この大会は半分は成功ではないかと思います」

 そう言い、ある種の充実感を表情ににじませる山根氏が、選手に何より望むのは、このファンたちの思いにプレーで応えることだという。

「選手に望むことは、まずは、全力でやってほしい。ランキングポイントは付かないけれど、勝ち負けによって対価は変わります。ユーザーは今回、なぜクラウドファンディングでお金を出してくれたのか? 彼らはスポンサーのように、広告などの営利目的でお金を払うのではありません。お付き合いでチケットをもらったから試合を見に来たという人もいない。全ては、純粋に試合を見たいからです。試合を見たいという人しか、ライブ配信も見ないんです。そのファンの気持ちに応えるプレーを、選手たちにはしてほしいです」。

 主催者の理念をプラットフォームとし、選手の全力プレーとファンの思いが交錯するその先に、テニス界の未来がある。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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