YouTuber那須大亮の使命とは? 「今こう思ってるよ」選手目線で伝えたい

元川悦子

昨年現役を引退した那須大亮さん。現在はYouTuberとして活動し、チャンネル登録者数も24万人を突破するほどの人気ぶりである 【スポーツナビ】

 新型コロナウイルス感染拡大によって2月23日を最後に公式戦が中断していたJリーグ。6月27日にJ2再開・J3開幕がいち早く実現し、いよいよ7月4日にはJ1の熱戦が再スタートすることになる。その日を心待ちにしているひとりが、YouTuberとしてサッカーの魅力を発信している那須大亮さんだ。現役時代からYouTubeを始め、昨季末の現役引退後は活躍の場をさらに広げている。工夫を凝らしたコンテンツは人気を博し、チャンネル登録者は24万人に上っている。このほど「DAZN Jリーグ推進委員会」にも就任した那須さんに、コロナ禍で考えたサッカーの価値や意味、再開後のJリーグの注目点などを聞いた。(取材日:2020年6月22日)

多様な角度からサッカーの魅力を伝えたい

――Jリーグ休止期間はどのような活動を?

 今まで現場に行って、選手と対談したり撮影していたものが、すべてオンラインになってしまいました。そうなると少し劣化版になりがち。何人か選手を集めて共通ワードでくくるといった企画を考え、試行錯誤していたんですが、なかなか難しかったですね。僕自身の人気を高めないとコンテンツの価値が上がらないと感じたし、語彙力や知識を含めた表現力にも磨きをかけないと再生回数も上がっていかないとも痛感しました。

 そこで本を読んだり、お笑いの方のYouTubeを見て言葉のチョイスや話し方を研究したりしましたね。僕はエンタメを含めた日本の全コンテンツのトップにサッカーを押し上げたいという強い思いがある。そのために、自分自身が学ばなければいけないことはまだまだ多いですね。

――元Jリーガーとしては異色のセカンドキャリアを歩んでいますが。

 僕は今が「社会人1年目」。よく「平社員」って言っているんですけど、名刺交換から人のご縁をつないでいただくことを含め、すべてが新しいことばかりなんです。謙虚さや学ぶ姿勢を持たないと先はない。「痛みを自ら拾いに行く」という言い方もしてますけど、失敗は必ず糧になる。恐れずどんどんチャレンジしたいと今は思っています。

 YouTuberっていうのは新しいジャンルだし、このコロナ禍で始めた人も多くて、視聴者が分散化されている傾向があります。だからこそ、より凝ったコンテンツを作らないといけないし、多様な角度からサッカーの魅力を伝える必要があります。例えば、ホペイロさんやクラブスタッフの方、応援の方々の活動を伝えるのもひとつですよね。ファンの方は一緒に戦う仲間。そういう人たちが腑に落ちるコンテンツを提供して、既成概念を変えられたらいいという気持ちです。

――「リモートマッチ」から始まるJリーグは、これまでにないサッカーの見方を提示する絶好の機会になりますね。

 選手の声というのはひとつの注目点です。無観客で再開されたプロ野球でも、福岡ソフトバンクホークスの柳田(悠岐)さんが20日の千葉ロッテマリーンズ戦で特大ホームランを打ったときに「よっしゃー」と言ってましたけど、ああいうのはホントに新鮮。僕自身も何回も再生して聞いちゃったんですけど、自分がナビゲーター側なら「この選手はこういう言葉を発しますよ」とか、「こんなに一生懸命になってるからぜひ聞いて」と強調したいですね。

 7月10日以降はお客さんが入る予定です。最大5,000人なので、埼玉スタジアムとか日産スタジアム、ノエビアスタジアムとかだったらガランとしているし、声がよく聞こえると思う。僕は個々のキャラクターを知っているので「彼は警告をもらわない言葉を使うかもしれない」とか少し突っ込んだ話もできます。嘉人(大久保=東京V)なら「“ザ・ストライカー”はカードなんか全然意識しませんね」とか言えちゃう(笑)。視聴者が面白いと感じられる持っていき方をしたいです。

――コロナ対策で吸水ボトル共用禁止になったことも選手には違和感があるようです。

 これだけの夏場の連戦なんて前代未聞ですから、吸水はすごく大事。サイドバックならちょこちょこ行けますけど、僕みたいなセンターバックだとタイミングが難しい。「今、あのDFは絶対に水飲みに行きたいと思ってますよ。でも行かないだろうけど」といった選手目線の説明は大事ですね。コロナ対策もあってこれまでと違うことが多くなり、誰しもがやりづらいのは確かだけど、これをピンチと捉えず、逆にチャンスと捉えることが重要。伝える側も新たな情報や見方を誘導して、人気につなげていければいいですね。

今季優勝の鍵は監督の“采配力”

2019年6月に神戸の監督へ就任したフィンク(右)。20年の天皇杯とゼロックス・スーパーカップの優勝へと導き、そのマネジメント力に今季も注目が集まっている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

――那須さんの注目チームは?

 J1ではヴィッセル神戸、横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、柏レイソルの4チーム。横浜FMは昨季J1制覇を果たし、神戸は今年の天皇杯とゼロックス・スーパーカップを取っているので、勝者のメンタリティーがチーム全体に浸透している。それに神戸は自分もいたから分かりますけど、フィンク監督のマネジメント力が高いですね。川崎はACL(AFCチャンピオンズリーグ)がないことが追い風でしょうし、柏はJ1昇格1年目で優勝した2011年の再現があり得ます。当時のキーマンはレアンドロ・ドミンゲスだったけど、その役割をオルンガが担いそうですし、監督はもちろんネルシーニョ。東日本大震災とコロナ禍で中断という状況も似ているので、期待できそうですね。

――真夏の連戦からスタートというのは、相当に過酷です。

 確かにそうですけど、結局のところ「やるしかない」ってところに行き着くんですよね。選手たちはサッカーができなかった分、試合ができる幸せや喜びの方が勝っているし、「何が何でもやりたい」という気持ちでいると思う。そこを監督がどうコントロールするか。11人だけじゃ絶対に無理なので、全員にモチベーションを持たせる采配力は注目すべき。監督によりスポットが当たるかなと感じてます。

 先行して始まった欧州を見ても、5人交代枠の使い方を含めて監督のマネジメントはいろいろ。強いチームである程度の戦力をそろえているのなら、順繰りで回して選手のコンディションを保ちながら連戦を乗り切る方法もあると思います。80分以降の交代カードもひとつのポイント。3-0とか2-0で勝ってるなら、次のために選手を代えようとする監督が出てきてもおかしくない。そういうのはあまりプロの解説者は言えないでしょうけどね(苦笑)。降格なしのルールがどう影響するかも大いに気になります。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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