連載:プロ野球 今シーズンに懸ける男たち

ソフトバンク・高橋純平を救った母の手紙 真価の問われる5年目、夢をあきらめない

小西亮
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3球団競合の末、ソフトバンクに入団した高橋純平。高卒4年目の昨季に大器の片りんを見せ、5年目の今季はさらなる飛躍を目指す 【写真は共同】

 ようやくと言うべきか、いよいよと言うべきか。ドラフト1位の原石が、光を放ち始めた。福岡ソフトバンクの高橋純平は、プロ4年目の昨季に中継ぎで45試合に登板し、17ホールドを記録。常勝軍団のセットアッパーも担い、成長著しい若手のひとりとして存在感を示した。

 真価の問われる今季は、3月に右肩を痛めた影響で開幕二軍スタート。過密日程による投手陣の疲弊を見越し、出番が回ってくるときを冷静に待っている。そう思えるのも、雌伏の3年間を過ごした先に、確かな自信を手にしたからこそ。完全覚醒を宿命づけられた5年目。近い将来にある「夢」に向かい、マウンドで躍動する。

「腕を振って投げる」気づいた自分の武器

――3月のオープン戦で右肩を痛め、開幕一軍を逃しました。昨季に飛躍のきっかけをつかんだだけに、余計悔しい思いもあるのでは?

 昨年やっと一軍でちょっと投げさせてもらい、今年はスタートの段階から一軍で自分のポジション(居場所)を見つけ出して定着したいなという気持ちがあっただけに、スタート時点で遅れているというのはすごく痛いかなと思います。今年はしっかり追い込んでいこうと気持ちを入れただけで体に反応が出たくらいなんで、やっぱり鍛え方が足りないというのが一番ですね。

――離脱した直後には、新型コロナウイルス感染拡大で全国的な自粛期間に入りました。

 自粛期間はリハビリ真っ最中だったので、自粛が明けたときに全然状態が良くなってないじゃないかとならないように、どこを強化すべきか考えながら取り組んでいました。あとは時間がたくさんあったので、油絵にも挑戦しました。母が趣味で油絵や日本画を描いていて、「僕も絵を描いてみたいな」と話をしたら、本格的な油絵のセットが送られてきました。誕生日だった友達に頼まれて絵を描きましたね。何を描いたかは内緒です(笑)。

――ご自身は昨季について「一軍でちょっと投げた」とおっしゃいましたが、チーム6位の45試合登板。何が結果につながったと考えていますか?

 考え方が変わったというか、思い切り良く投げられるようになったかなと。

 僕は1年目から結構打たれてきたのもあって、コントロールに敏感になっている面がありました。初球から全て外角にきっちりと投げられれば問題ないですが、そんなにコントロールが良い方ではない。では自分の良いところは何かと考えた時に、武器としてのストレートをいかに腕を振って投げられるかだなと思ったんです。大胆に投げてファウルでも何でもいいからカウントをひとつ取ればOKという気持ちで。それが中継ぎというポジションにもハマったのかなと思うんですよね。

――昨年6月には、球団史上初の2日連続で勝ち投手という印象的な出来事もありました。

 中継ぎで勝つのはラッキーな部分も多いんですけど、ひとつの形としてうれしかったです。でも、初めて一軍で黒星がついた試合というのも、すごく覚えています(2019年8月15日の東北楽天戦、延長11回にサヨナラ打を浴びる)。僕のせいでチームが負けたというのも、結構印象的で……。そのせいで勝手に楽天に対して苦手意識を持ってしまって、自分の中で葛藤しながら勝負しなければいけないという状況もシーズン途中には正直あったので。

3年目オフ、同期の育成落ちに「やばいな」

3年目のオフ、同期の小澤(中段左)が育成契約に移行。高橋(中央下)はこの現実に「結構やばい」と感じたそうだ 【写真は共同】

――昨季で潮目が大きく変わりました。振り返ってみると、3年目までは苦しい日々でした。

(新人合同自主トレ初日に左すねに張りを訴え)足をケガした状態でプロに入り、練習内容や試合結果で先輩たちとの差が埋められないという実感がすごくあって……。記者さんに「焦りはないですか?」と聞かれたら「いや、ないです」と答えていたんですが、自分でもそう思い込ませることで気持ちを保っていました。自分の技量に見合っていないのに、一軍ばっかり見ていました。

 3年目のオフには、同じ高卒でドラフト2位で入った同期の小澤怜史が育成選手になって、とうとう一緒にやってきたメンバーが戦力外になる年代になったのかと……。結構やばいなって思ったのは、はっきり覚えています。

――そんな苦しい状況の中で4年目に突入しました。

 3年目から4年目へと向かうときに、岐阜にいる母から手紙をもらったんです。
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