鷹詞〜たかことば〜
ファンが待ち焦がれた逸材・高橋純平 自信を深めたストレートで欠かせぬ戦力へ
武者修行の中で思い出した原点
2015年ドラフト1位でソフトバンク入りした高橋純平。長らく一軍で活躍できなかったが、今季は勝利が近づく場面で登板するリリーフとして、貴重な戦力となっている 【写真は共同】
だから、今年の高橋純平の覚醒が嬉しくてたまらないのだ。声援もひと際大きくなる。鷹ファンの素直な気持ちが球場の熱を上げている。
そして苦悩のままシーズンが幕を閉じると、心痛な報せ(しらせ)が次々と届いた。同期のドラフト2位・小澤怜史をはじめ、同4位の茶谷健太と同5位の黒瀬健太が戦力外通告を受けたのだ(小澤と黒瀬は福岡ソフトバンク育成で再契約。茶谷は千葉ロッテ育成)。皆同じ高卒からプロ入りした仲間である。
「僕らの世代もその対象ということ」
4年目を迎えた春のキャンプで、高橋純ははっきりと「今年が最後かもしれない」と口にした。オフ期間に参加したプエルトリコでのウインターリーグで己を見つめ直した。海外の有望若手投手たちのボールは確かに速かったが、自身の直球でも外国人打者を十分に押し込んでいた。
「開き直って真っすぐを投げ込んでみたりもしました」
思いっきり腕を振る。失っていたピッチャーとしての原点を、武者修行の中で思い出した。投球フォームも高校時代からプロ入り直後にかけての頃の投げ方に戻した。
すると、持ち味だった伸びのあるストレートが再び投げられるようになった。昨年は140キロ未満の時期もあったが、150キロ超もマーク。「昨年ならば、スピードを意識して思いっきり投げたらすっぽ抜けていた。外角高めにきっちり投げられることなんて全くできなかった」と春先はファームで登板を重ねるたびに自信を深めていった。
緊張を楽しめるようになった
6月29日、プロ初勝利を挙げ、工藤監督(右)と記念撮影に臨む高橋純。翌日、プロ2勝目は続けて挙げた 【写真は共同】
さらに驚いたのが翌日だ。またも中継ぎで登板して無失点投球とすると、味方打線が直後に逆転。プロ初勝利まで4年もかかったのに、2勝目はあっという間に手にすることができた。プロ初勝利から2日連続勝利は球団日本人投手では初めて。また、新人以外の投手が記録したのはプロ野球史上初めてだった。
勝利の方程式の証であるホールドがつく場面での登板も増えてきた。7月20日の東北楽天戦(楽天生命パーク)では先発した和田毅が負傷降板したところを緊急リリーフする難しい場面だったが、2回3分の2のロングリリーフで無安打4奪三振無失点の快投を見せつけた。
「工藤(公康)監督からは『緊張を楽しめるか、押し潰されるか、どちらかしかない』と言われています。最近は楽しめるようになってきたかなと思います」
信頼を勝ち取った実感はまだないと照れるが、投げ込むストレートにはたしかな自信を持てるようになった。
「思いっきり腕を振れば150キロは出せます。ただ、ホークスのブルペンは150キロ以上投げるピッチャーばかり。160キロを出すんだという気持ちで、もっとストレートを磨いていきたいです」
将来的には先発としてエースの座も狙える逸材だが、今季は最後までブルペンからチームを支えていくことになりそうだ。試合が終盤に差し掛かる頃、マウンドに上がる高橋純が勝利に近づくソフトバンクのブーストになる。
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