150%成長を続ける茨城ロボッツ B1昇格そして日本一へと続く道に挑む
茨城ロボッツが、第3回日本スポーツビジネス大賞のライジングスター賞に輝いた。(左から)株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントの上原和人GM、山谷拓志社長、堀義人オーナー、株式会社いばらきスポーツタウン・マネジメントの川崎篤之社長 【(C)IRSE】
ターニングポイントは「出会い」
茨城ロボッツの「アダストリアみとアリーナ」。2019年4月6日のオープニングゲームではB2の観客動員数新記録を樹立した 【(C)B.LEAGUE】
山谷: ありがとうございます。スポーツビジネスにフォーカスした賞はほとんどないですものね。審査員をされているそうそうたる皆さんに茨城ロボッツに関心を持っていただき、このような評価をしていただいたことは、とても光栄でうれしく思います。
一方で、茨城ロボッツ自体、何を成し遂げたのかと問われれば、今シーズンは中途半端な結果になってしまったこともあり(3月27日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による今シーズン残り試合の全試合中止が決定)、まだB2リーグ優勝やB1昇格を成し遂げたわけでもないですし、スポーツチームとしてまだ誇りに思える成果は出せていません。独特の取り組みをしているとはいえ、成果はまだまだこれからだと思っています。
――山谷さんがBリーグの前身である日本バスケットボールリーグ(NBL)の専務理事兼COOを務めていらっしゃった当時、2014年につくばロボッツは経営破たんしています。そのような状況で経営再建を託され、茨城ロボッツとして業績を回復成長させたところも高く評価されました。
山谷: ラジオ放送局との連携や水戸市におけるスポーツによる街づくりもご評価いただきましたが、その点では、私自身の手腕というよりも、グロービス経営大学院の学長である堀義人さんとの出会いに尽きると思っています。私自身にアイデアがあったとしても、それを実現するための資金面や街全体を巻き込むための大きな影響力までは持っていません。2016年に堀さんと初めてお会いして、地元・水戸に対する彼の想いや地方創生にかける意気込みと、私たちロボッツの目指す方向が重なり、事業をご一緒させていただくことによって、クラブの経営にドライブがかかったと感じています。
また、もう一つ大きかったのは、かつて水戸市議会議員で、スポーツによる街づくり分野の責任者を担ってもらっている川崎篤之さんの存在です。堀さんが掲げた方針に対して、行政や地元企業の皆さんなど、さまざまなステークホルダーとの細かな利害調整をしてくださった。堀さんの従来の発想をこえた大胆な提案と、それを具現化するための川崎さんによる地道な調整。今回評価していただいたような普通のプロスポーツチームとは異なるチャレンジは、堀さんや川崎さんがいなければ成し遂げられなかったと感じています。
そして、それに加えて、現在27名ほどの社員たち。この規模で多角化した複雑な業務に対応しながら、しっかりオペレーションしてくれる彼らにも本当に感謝しています。
茨城ロボッツの試合に駆け付け、ファンとともに応援する堀義人オーナー 【(C)B.LEAGUE】
山谷: もともとはつくば市を本拠地にしていたわけですが、2019年茨城国体に向けて計画されていたつくば市の総合運動公園体育館の建設構想が、2015年8月の住民投票で否決されました。Bリーグ参入審査の期限が迫る中、メインアリーナを想定していた施設が建設されないことになり途方にくれていたとき、水戸市にある体育館が国体向けに改修されるという話を耳にしました。人づてに紹介していただき、水戸市長にお会いしてお話ししたところ、新しいホームアリーナを本拠地として応援しようとすぐに決断してくださいました。水戸市を本拠地にすることだけは決まったものの知り合いもいませんでしたから、とにかくいろいろな会合に参加するようにしていたのです。
そうしたなかで、水戸のコミュニティーFMで番組を持っていた川崎さんのラジオ番組に出演することになり、2016年2月から堀さんを中心に展開することになった「水戸ど真ん中再生プロジェクト(M-PRO)」にもお声がけをいただき、ロボッツも参画することになりました。初めての会合に参加したときに、堀さんがいらっしゃって。二次会の懇親会で座った席がたまたま隣になりました。このチャンスを逃すまいと思い、Bリーグや茨城ロボッツのことを熱弁したところ、すごく関心を持ってくださったんですよね。以前堀さんが川淵三郎さんと会ったときにBリーグについて話していたという経緯もあったようで、地元のBリーグチームを応援しようということで話がはずみ、その後メールをやり取りする中で、個人で1000万円の出資をしてくださることになった。その後、僕が個人で借金して6000万円出資していることを知ると、同額を出資してくださることになって、50%ずつの株主になっていただいたことが現在の関係を築くきっかけとなりました。
――まさにご縁ですね。
山谷: そうなんですよ。歴史の街・水戸と研究学園都市・つくばは、茨城の中でも非常に特徴的な街であり、人口的にも茨城を代表する二大都市です。ロボッツの社長就任直後は苦しい時代を過ごしましたが、結果的にこの県内の二大都市とご縁ができたこともラッキーでした。とくに、水戸は県庁所在地ということもあり、人、モノ、金、情報が集まってきますし、堀さんにも出会えたわけですから。現在の発展に向けてのきっかけになったと感じます。
結果につながることを信じて種をまくしかない。ほとんどが空振りかもしれませんが、それを恐れず、とにかくバッターボックスに入ってバットを振る。そんなふうに挑戦し続ける感覚を大切にしてきました。