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フランス首相の発言から急転直下
リーグ・アン中止まで「3日間の顛末」

 4月30日、新型コロナウイルスの感染拡大により、フランス・リーグ1・2部リーグの今季打ち切りが決まるという、前代未聞の事態が起きた。フランス首相が「サッカーの2019-20シーズンは再開できない」と発言してから2日の間に、急転回で最終結論に至ったのである。

すべてを変えた首相の言葉

シーズンは打ち切りとなったが、「パフォーマンス指数」により順位を決めPSGが3連覇を達成した
シーズンは打ち切りとなったが、「パフォーマンス指数」により順位を決めPSGが3連覇を達成した【写真:ロイター/アフロ】

 フランスでは3月半ば過ぎから、食料品店・薬局など生活必需品を売る店を例外に、ほぼすべての店舗、学校などを閉鎖し、市民に集団行動および不必要な外出を禁じたロックダウンが行われ、その区切りの日付は、5月11日に設定されていた。


 5月11日に現行の自宅隔離の令が解除されるとの展望のもと、リーグ1・2を統括するLFPと、同リーグのプロクラブは、5月12日の医療検診を経ての練習開始、6月17日の2019-20シーズンの再開を目指していた。ところが様々なウイルス対策のプロトコールや、段階を追った練習の進め方を練り上げているまっただ中だった4月28日、仏政府が半月ごとに行う新型コロナウイルス対策の更新案を国会で発表。エドゥアルド・フィリップ仏首相は、5月11日以降も当面の間チームスポーツの実施は許されず、9月まで5000人以上を動員するイベント開催はできないという方針を説明し、最後に「プロスポーツ、特にサッカーの19-20シーズンは再開できない」と言い添えた。


 この発言の震度は大きかった。首相の演説が終わるや、いくつかの新聞は、性急にリーグ1・2の今季は終了と発表。その他の媒体は、スポーツ大臣が補足した、「7月いっぱいは無観客でもチームスポーツの試合はできないが、8、9月からなら現行のシーズンを続けることは各協会次第では可能かもしれない。」という言葉を受け、今季打ち切りの是非は、LFPが4月30日に行う取締役会で公式に決められることのみを報じた。


 首相の言葉の意味の解釈が人によって違い、様々な説が飛び交った。しかし、決定打として響いたのは、首相の演説と同じ日の夜に、フランスサッカー連盟(FFF)会長・ノエル・ルグラエ氏が新聞のインタビューで答えた、「リーグ1と2の今季は終わった。また男子3部、女子1部リーグに関しても同様で、この4リーグの今季は終了となった」、という言葉だった。


 厳密にいえばプロリーグを統治するのはLFPであり、上記の4リーグのうちFFFが直に管理するのは3部リーグと女子1部リーグだけだ。つまり直接的決定権はFFFにはないが、LFPの取締役会にはFFF代表者が含まれており、FFF会長はLFPの決断を査定する権利を持つ。またルグラエ会長が、前日にエマヌエル・マクロン大統領から、(6月半ばの)リーグ再開は不可能という政府の方針について聞かされていたということ。フィリップ首相の発言後、すでにUEFAと連絡をとり、政府の方針に強いられた決断をUEFAの代表に伝えた、と言ったことから、今季打ち切りを事実上の決定事項と見る空気が色濃くなった。


 4月28日の夜、FFF会長は、「8月に無観客で来季を始められるよう願う。そうでなければ日程的に非常に難しくなる」と話し、完全に来季に目を向けていたのである。


 UEFAが欧州各リーグは8月3日より前に今季を終えることを望んだため、フランスは7月25日終了を目指していた。そのためには3日おきに試合を行ったとしても、6月半ばにリーグを始める必要があった。そうなると5月半ばに練習を開始しなければならなかったが、それは政府の令で不可能となった。


 これ以前に、6月の再開は困難とみて、9〜11月に今季を終わらせるという案も挙がっていた。もっともUEFAが来季の欧州カップ戦を、予定通り秋に始めようと考えている限り、そして欧州の主要国の皆が足並みそろえ同様の日程にしない限り、この案は全く意味がなかった。


 しかし、リーグ打ち切りの可能性が限りなく高まる中、それを強く否定する人物が、少なくともひとりいた。

リーグの決定に反対を表明したリヨン会長

「首相の言葉によって、5月11日に練習を始め、6月半ばに試合を開始して、8月3日前にリーグを終えるシナリオは不可能となった。それで、皆がシーズンは終わったと考えたようだが、私は違う」と声を大にして主張したのは、リヨンのジャン・ミッシェル・オラス会長だ。オラス会長は、シーズン終盤をプレーオフに、という縮小した形に置き換えて、8月に行うことを強く主張。同時に、「リーグ1・2の今季は終わった」とコメントしたFFFのルグラエ会長を非難した。オラス会長が、シーズン打ち切りを避けたい理由は明瞭だった。リヨンは28節終了時点では7位と、ELにも行けない順位にいたのである。


 これに先立ち、LFPと各クラブ会長は、リーグの今季を打ち切らねばならなかった場合の対処法に関しても話し合いを行っており、その際にリヨン(リーグ中断時、28節終了時点で7位)とトゥールーズ(中断時に最下位)は、今季を無効にすることを強く押していた。賛同者がおらず早々に退けられたこの案は、今季が無効となった場合「降格チームは無し」、「欧州カップ戦出場権は、昨シーズン末に出場権を得たPSG、リール、リヨンになる」、という内容だった。


 今季無効と、プレーオフは両極端であるため、リヨンに都合がよければ何でもいいのかと、オラス会長に対し嘲笑と非難の声が上がったのも無理もない。しかし各クラブが自らの実りを追って奔走するのも、また理にかなったこと。クラブ代表者間で意見が食い違い、議論が過熱する中、4月30日のLFP取締役会会議の日がやってくる。

木村かや子

東京生まれ、湘南育ち、南仏在住。1986年、フェリス女学院大学国文科卒業後、雑誌社でスポーツ専門の取材記者として働き始め、95年にオーストラリア・シドニー支局に赴任。この年から、毎夏はるばるイタリアやイングランドに出向き、オーストラリア仕込みのイタリア語とオージー英語を使って、サッカー選手のインタビューを始める。遠方から欧州サッカーを担当し続けた後、2003年に同社ヨーロッパ通信員となり、文学以外でフランスに興味がなかったもののフランスへ。マルセイユの試合にはもれなく足を運び取材している。

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