連載:見抜く力 阿部慎之助の流儀

阿部は「できないことを見極める」 試合に出ることだけが全てではない

長南武、金子卓麿
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第4回

開幕前、万全ではない阿部を救ったのは指揮官の一言だった 【写真は共同】

 開幕カード、広島戦直前のマツダスタジアム。打撃練習のさなかだった。阿部は原辰徳監督に呼び止められ、告げられた。

「これから長いシーズンが始まるけれど、お前さん、将来のために自分が監督だと思って野球を見なさい」

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 まだ体調は十分ではなかった。

「キャッチャーで復帰するならあと半年かかるな」

 1カ月前に傷めた左ふくらはぎはいつ悲鳴をあげるか分からない状態。キャッチャーの構えから立ち上がる動作がままならない。だが心の状態は一時よりも上向いていた。心の空模様は雲一つない快晴とは言えないが、雲の合間に青空が覗(のぞ)いている。

 きっかけをくれたのは誰あろう原監督だった。3月中旬、三軍での調整中にメッセージが届いた。

「自分でキャッチャーに戻ると言って、プレッシャーをかけすぎちゃったか? 気楽にいこうぜ」

 救われた。そうか、チーム全体を見渡せば、銀ちゃん(炭谷銀仁朗)も誠司(小林)も大城(卓三)もいる。キャッチャーは俺一人じゃないんだ。

 監督が代打やファーストで使ってくれるなら、それに備えればいいじゃないか。監督は選手の俺よりもずっと大きな地図でものごとを見ているんだから。そう考えると、ずいぶん気持ちが楽になった。
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著者プロフィール

1967年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーディレクターとしてスポーツを中心とした数多くの映像番組の取材や演出、構成を手掛けている。

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