「肩書」にこだわった阿部のラストイヤー 捕手への復帰にこだわり続けた意味
第2回
2019年、阿部は捕手への復帰にこだわった。しかし、プロ19年目を迎えた体は思うように動かず、その道は険しかった 【写真は共同】
ここまで自分はできなかったのかと愕然とし希望が見えない。昔は意識もせずに簡単にできていた動きが、どんなに頑張っても全くできない。キャッチャーとはこんなにも難しいものだったのか。イメージしている2割ほどしか体が動いてくれない。
やりたいと思う心に、やろうとする体がついてこないのだ。背中を傷め、癒えたかと思えば今度はふくらはぎを故障する。戦線離脱に「次はないぞ!」と原監督から釘を刺されもした。
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2019年3月のこと。表情筋が弛緩(しかん)した二日酔いのような顔で練習グラウンドに出る毎日。自己嫌悪が続き、毎晩寝付けなかった。阿部は一軍の長期遠征から離れて一人帰京し、三軍に合流する。
キャッチャー復帰。高らかに掲げた宣言が不惑のベテランを苦しめていた。
阿部がキャッチャー復帰を決めたのは前年、2018年の11月のことだった。秋季キャンプの第2クール、ジャイアンツ球場での練習に参加した阿部は報道陣にそれを明かした。
「本当に悔いのないように、自分の心の中で整理して監督に伝えて、それを快く受け入れていただいた。言ったからには中途半端にしたくない」
監督とは、高橋由伸に代わって4年ぶりに巨人に復帰した原辰徳を指す。
巨人はFAで埼玉西武から炭谷銀仁朗を獲得していた。この年入団した大城卓三も自慢の打力とともに存在感を発揮しており、小林誠司もいる。復帰を決めた理由については「ファーストにいってから優勝していないし、そこで迷惑をかけてしまったという責任をすごく感じているので、来年以降何ができるのかと自分で考えたときに、こういう決断に至りました」と述べている。
来年以降、と言っている通り、この時点で引退するつもりはなかったのだ。そして同時に、自分が捕手に専念することが優勝への道だと考えていたことになる。
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