連載:見抜く力 阿部慎之助の流儀

阿部慎之助は何より「人」を見ている 引退を決断した舞台裏と、その素顔とは

長南武、金子卓麿
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第1回

19年間のプロ野球生活を全うした大スターが、余力を残しながらも現役を退いた理由を紐解く 【写真は共同】

 持っている人、巡り合わせの良い人、引きの強い人は確かにいる。プロスポーツでいえば、そうした選手はスターになり、運命に愛され続ける。

 だが立ち止まって考えた時、運命に愛されるということは状況に愛されるという事実でもある。運命に愛される選手は決して運が良いだけの選手ではない。その選手には状況を見渡し把握して、自分が期待される役割を全うできる力があるのだ。

 阿部慎之助はまさにそういう選手だった。

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 阿部は打席に入る際の登場曲に、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの往年のヒットソング、『セプテンバー』を使用している。

 その威力はすさまじい。阿部の名前がコールされ、軽快なメロディが流れると、東京ドームの客席から地鳴りのような轟音と振動が生まれ、スタジアムはたちまち興奮のるつぼと化す。

 1978年に発表された『セプテンバー』は、1979年3月20日生まれの阿部にとっては、リアルタイムに聞いた曲ではない。

 初めて聞いたのは大学生の時で、登場曲を決める際に「ノリが良くて、自分もファンも球場も盛り上がれるから」ということで選んだものだった。折しもその歌詞にあるように、2019年の9月21日の夜、巨人は5年ぶりのリーグ優勝を決めた。

 まさに運命的な巡り合わせについて阿部自身はこう語っている。

「ゾクッとした。あの曲を流すことで、代打で出た時も声援をもらえるし、あれが阿部慎之助のテーマソングと印象づけられたしね」
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著者プロフィール

1967年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーディレクターとしてスポーツを中心とした数多くの映像番組の取材や演出、構成を手掛けている。

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