連載:「挑戦と葛藤」〜Bリーグ・コロナウイルス対策の舞台裏〜

田口成浩「Bリーグとの関係が深まった」 選手会長として奔走した1カ月

大島和人

リーグには「誰もネガティブでない」と伝えた

今は最悪の状況と語るも、コート外でのファンサービスや来季へ向けて、前向きなコメントが多くみられた 【スポーツナビ】

――リーグは15日の10時から集まって会議を開いたと聞いています。

 ミーティング中に大河(正明)チェアマンが電話をかけてくださって、気持ちを伝えて、「とりあえず今日は何とかやってくれ」という話でした。残念ながら自分たちの試合(千葉vs.宇都宮)は審判の発熱があって中止になりましたが。

 週明け(16日)には、オンラインの人もいたんですけれど、選手会とリーグでミーティングをしました。17日の実行委員会も、一緒に(オブザーバーとして)参加させてもらっています。

――選手会の会員ではありませんが、外国籍選手の不安は日本人以上に強かったようです。その受け止めはどうですか?

 みんながみんな同じ意見ではなくて、チャンピオンシップだけはやりたい選手もいたし、今すぐ家族のもとに帰りたいという選手もいました。何も考えられず「どうなるんだ?」と不安になっている選手もいました。

 だから、なおさらコミュニケーションを取りました。自分が選手会の会長をやっていることもあって、彼らから積極的に「これを伝えてほしい」と声をかけてくれました。

――朝山正悟選手(広島ドラゴンフライズ)が大河チェアマンとの面談で伝えたように、B2の立場が弱い選手からは「試合に出てアピールしたい」「外国籍選手が帰国したら出番が増える」という声もあったと聞きます。いろいろな立場や意見がある中で、全体を背負う難しさはありませんでしたか?

 おっしゃる通り、いろいろな意見があります。試合を続けたい選手もいるし、不安だからやりたくない選手もいる。それぞれの立場になって考えれば「確かに……」と、すべての意見が分かります。自分はまず「分かった」「伝える」という立場です。「これはダメ」「あれはいい」と安易に言えません。すべての人を喜ばせることはできなかったと思います。

 ただ、リーグに自分が伝えたのは「選手を第一に考えて決断してくれたことに関して、選手はおそらく誰もネガティブな気持ちにはならない」というメッセージです。
――リーグは当初「クラブの頭越し」という躊躇(ちゅうちょ)もあったようですが、3月16日、25日に選手会と会合を持ちました。リーグの選手会に対する向き合いをどう評価しますか?

 素直にありがたかったです。聞くだけではなくその意見を取り入れて、一緒に考えてくれた。リーグとの関係が深まったし、チェアマンは「リーグと実行委員会、選手が一枚岩になってこの状況を乗り越えたい」と言ってくれました。こういう機会は大事だったと思います。

――その後、選手から集まっているリーグへの提案や要望はありますか?

 今はとりあえずリーグに対するものはほとんどなくて、今の状況をどう乗り越えていくか、どう自粛を心掛けるかです。あとは各チームですね。本当は練習、試合という仕事をしていないといけないときじゃないですか。その中でやれることを見つけようと考えています。今だったらインスタライブだとか、YouTubeだとか、配信のところで力を入れていこうぜ、と。うちのチームはそこに力を入れてやっています。

――選手会の田渡凌副会長がエアロビチャレンジの動画をTwitterにアップして、大きな反響を呼んでいました。

 行動に移すことが大切だと思います。試合という楽しみをなくしてしまっている方もたくさんいる中で、皆さんを喜ばせたい。またそれを楽しみにしてもらえるようなことを、していきたいと考えています。

――最後にBリーグの再開を待つファン、ブースターの方にメッセージをお願いします。

 本当に今、誰もが感じていると思いますけれど、この状況って最悪だと思います。そこから最高の状態に持っていくには感染を避けるための手洗いうがい、自粛のような当たり前の行動が大事になってきます。選手だからでなく、一人の人間としてやっていかなければいけないと思います。それをやり切って、最高の状態で、またコートでお会いできることを楽しみにしています。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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