「患者にならないことは素晴らしい貢献」 最前線で戦う医療従事者とともに

いとうやまね

医療従事者とその家族を守らなければ

回復後、ウェブ上でインタビューに応じたJFA田嶋会長。自身の体験をもとに、医療従事者とその家族の安全を訴えた 【写真は共同】

――田嶋会長は、今最前線にいる医療従事者のご家族が、心ない批判を浴びていることを気にされているようでした。

 彼はそういった偏見をなくしたいという考えもあって、公表に踏み切ったと思いますが、その後に自分の家族が実名で出るとまでは考えていなかったと思います。私自身も記事を見て驚きました。ただ、逆の立場になれば、「うちの選手があの医者のいる施設を使っているけれど、大丈夫なのだろうか」と心配するのは当たり前の話で、これはきちんと伝えるべきだと思いました。公表するにあたっては、そういったところも考えないといけないと、今回田嶋自身も思ったでしょうし、私自身も前もって関係各所に正確な情報を送っておかなければいけないと思いました。

――実際に、医療従事者のお子さんがいじめにあっているケースも報道されています。

 たまたまテレビ音声を車中で聞いていたのですが、感染者を受け入れている病院の看護師さんやご家族が、やはり差別を受けていると。お子さんを保育園に連れてこないでほしいとか、あらぬ風評被害を受けている。私も同じような経験をしましたが、そういった環境の人たちをきちんと守ってあげないといけません。

 今、誰もが感染する可能性があって、もちろん心配される方の気持ちもよく分かります。ただ、最前線で働いている方たちは身の危険を冒しながらもこの病気と戦っている。そういう差別をなくさなければならない、あるいは何か特別な対応ができればと思います。何ができるかは、考えを形にできていませんが、おそらく最前線の医療従事者の負担を少なくすること、実際の現場で起きていることを、正しく伝えていくことかと思います。

(構成:スポーツ企画工房)

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土肥美智子(どひ・みちこ)
国立スポーツ科学センター・スポーツメディカルセンター副主任研究員。医学博士。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1991年、千葉大学医学部卒業。医師国家試験合格後からスポーツドクターを目指す。放射線診断学専門医として大学病院に勤務するかたわら、スポーツドクターとして主にサッカーの仕事に携わる。2006年より国立スポーツ科学センターに籍を置き、スポーツドクターに専念。トップアスリートの健康管理、臨床研究およびオリンピック、アジア大会、男女サッカーワールドカップ等に帯同。日本オリンピック委員会(JOC)医学サポート部会員、日本サッカー協会(JFA)「医学委員会」委員、アンチ・ドーピング部会長、アジアサッカー連盟(AFC)「医学委員会」副委員長、国際サッカー連盟(FIFA)「医学委員会」委員、国際オリンピック委員会(IOC)「スポーツと活動的社会委員会」委員ほか 。近著に『サッカー日本代表帯同ドクター』(時事通信社)。

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著者プロフィール

サッカーおよびフィギュアスケートのコラムニスト、サッカー専門TV、欧州実況中継、五輪番組のリサーチャー。コメンテーターとしてTVにも出演。Interbrand、Landor Associates他で、シニアデザイナーとしてCI、VI開発、マーケティングに携わる。後に、コピーライターに転向。著書は『氷上秘話〜フィギュアスケート楽曲プログラムの知られざる世界』『フットボールde国歌大合唱』他、構成『サッカー日本代表帯同ドクター』(土肥美智子)他。

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