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変幻自在のレフティ吉濱遼平が山口を導く
矛を握り直し、あくまで攻撃的に
開幕戦はベンチスタートとなった吉濱だが、プレーの引き出しが多く、プレースキックという武器もある。山口躍進のカギを握る一人だ
開幕戦はベンチスタートとなった吉濱だが、プレーの引き出しが多く、プレースキックという武器もある。山口躍進のカギを握る一人だ【(C)RENOFA YAMAGUCHI】

 レノファ山口FCに来て2年目の吉濱遼平は、チームが目指す「全員攻撃」に人一倍強いこだわりを持つ。戦術的柔軟性があり、判断力にも優れるレフティは、開幕戦で示したように、勝利優先でリスクを取らず守備に注力する戦い方にも適応できる。それでも“山口らしさ”を追求していく考えにブレはない。左足のラストパスや巧みなドリブルを駆使して、攻撃サッカーを貫く。

開幕戦では初めて右ウイングで出場

 J2リーグ屈指の攻撃力を誇るレノファ山口FC。ただ、2月23日の開幕戦では最強の矛を握って攻め立てたというよりは、破れない盾を両手に持って耐えしのいだ。試合に途中から入った吉濱遼平も、矛を盾に持ち替えて戦った。


 吉濱といえば、敵陣で巧みにボールを配り、プレースキッカーとしても安定感があるレフティだ。トップ下が適役と言えるが、開幕の京都サンガF.C.戦では山口に来てからは初となる右ウイングで出場。動きの縛りが大きいウイングでもボールを引き出し、クリーンシートでの勝利に貢献した。


 ピッチに入ったのは68分。スコアは1-0で、山口が1点をリードしていた。しかし、なんとかゴールを奪おうと次々とタレントを投入してくる京都に対して、山口は防戦一方。もう1点取りに行くべきか、攻撃を自重してリードを守るべきか、判断の難しい状況だった。森晃太に代わってゲームに入った時、吉濱はピッチの外からは見えなかった重苦しさをすぐに感じ取る。


「ピッチに入ったときに、みんなから『点を取られたくない』という空気を感じた。みんなの顔もきつそうだった。無理に攻撃に行くよりは、隙を見て時間を作ることと、守備でのハードワークを意識した」


 京都守備陣に囲まれても、吉濱はボールを保持したり、タッチライン際をドリブルで駆けたりした。シュートにつながるパスも繰り出したが、それよりもドリブルやその場でのキープで時間をうまく使うことで勝利を後押しした。


「みんなバテていた。僕もスタメンで出ていたらそうだったはず。自分のところで持ってあげると(チームが)楽になる。時間を作れたのは良かった」

チーム戦術を正確に遂行できるドリブラー

 吉濱は自らを「もともとドリブルは好きだし、自分ではドリブラーだと思っています」と言うが、山口で2年目を迎えたレフティは判断力もさえる。Jリーグの再開後も彼の試合の流れを読む能力と、的確な判断は山口の強みになるだろう。ドリブラーであっても、「ワンタッチ、ツータッチがコンセプト」のチーム戦術を正確に遂行できるのが吉濱なのだ。


 試合のピッチだけではなく、練習でも存在感は大きい。モチベーションを保ちにくく、先を見通せない中断期間であっても、緊張の糸を緩めずトレーニングに励む。報道陣向けに公開された3月19日の練習では、タッチ数を制限したミニゲームで吉濱の声が轟いた。


「(浮田)健誠、行け!」、「そこで取られるな!」。


 声を向ける相手は新戦力や若手。チームコンセプトを浸透させるため、さまざまな言葉を投げかけて、チーム戦術の理解を促していた。

勝ったからオーケーではない

 吉濱にとって、試合は終わってしまえば過去のもの。開幕戦の余韻がさめやらぬ2月25日に、筆者が「開幕で勝てたのは自信になるのでは?」と投げかけると、「去年は耐えられずに最後に失点することがあった。その意味では良かったが……」と前置きし、こう続けた。


「勝つとポジティブなところしか見えないが、僕らがやっているのはそういうこと(守備偏重の試合)じゃない。開幕戦では最後は割り切ったが、それを続けるようでは勝てない」


 全員攻撃で相手ゴールに襲いかかるサッカーを山口らしさと言うならば、守備に追われたゲームを受け入れるわけにはいかない。吉濱は「勝ったからオーケーではない」と語気を強めた。


 昨季は開幕戦でゴールを挙げ、残留争いに陥りそうな夏場のゲームでは左足のシュートでチームを窮地から救った。今季の開幕戦ではパスではなくドリブルや守備で奮闘した。味方のゴールを生み出すラストパスの名手は、仮面の内側に山口らしくなくても勝利を引き寄せられる複数のカードを忍ばせている。


 だが、山口が握るべきは盾ではなく矛だ。「僕らがやりたいのは、最初から前から行ってコンパクトにしてサッカーをすることだ」。


 再開後の山口で大きな役割を演じていくべき吉濱遼平に、かかる期待は大きい。


(企画構成:YOJI-GEN)

上田真之介

1984年生まれ。北九州市小倉北区出身。自称「世界最小級ペンギン系記者・編集者」。学生時代に後輩から「ペンギンみたい」と言われて以降、ペンギンはアイデンティティとなっている。アザラシの「しろたん」グッズも収集しており「しろたんっぽい」と呼ばれることもある。サッカー誌等でレノファ山口とギラヴァンツ北九州を担当。街ネタや鉄道も好んで取材。路線図作りも得意技のひとつ。

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