連載:決戦! 東京マラソン〜五輪代表を懸けたトップランナーの軌跡〜

群雄割拠の東京マラソン2020 「2時間5分49秒」を破る者は出るか?

加藤康博

シンプルに出場を決めた大迫

昨年9月のMGCでは服部(写真左)、中村(同右)に敗れ、あと一歩で代表権を逃した大迫(同中央)。東京マラソン2020では自らの手で権利を勝ち取りにいく 【写真は共同】

 MGC3位、日本記録保持者の大迫は3枠目を待つのではなく、自らの手でそれを確実なものにするために出場を決めた。「守るという立場で考えるのか、ひとつのチャンスを勝ち取ると考えるのか。日本記録や優勝、新しい自分を発見するためとシンプルに考えれば物事はシンプルに動いていく」と今回の決断の理由を明かす。これまでマラソンでは3位が4度と優勝がなく、それを狙いたいという思いは強い。

 今大会に向け2か月半、ケニアで合宿を敢行した。「練習は今まで通りで変わりませんが、ケニア人のパートナーと一緒に練習して、彼ら以上に走り込み、質の高い練習ができたことは自信になった」と調整も順調の様子だ。目標タイムもレース展開も口にすることはない。ただレースの流れを見極め、勝てるチャンスを取りにいく考えを示しており、こちらも順位を取りにいった結果としてタイムを狙うことになる。

 派遣設定記録の突破を果たすとすれば2時間5分台のベストを持つ大迫、同じく6分台の設楽、井上の「3強」の可能性が高い。だが先に挙げた村山は早くから潜在能力の高さを評価されており、ブレークの可能性を秘める。ハイペースへの対応力は佐藤悠基(日清食品グループ)も高いが、どこまで後半の失速を抑えられるか。また一般参加選手では2月の丸亀ハーフで小椋裕介(ヤクルト)が設楽の持っていた日本記録(1時間00分17秒)を更新する1時間00分00で優勝しており、そのスピードをマラソンでも発揮したい。MGCを故障で欠場した一色恭志(GMOアスリーツ)も状態は良好とのことだ。
 ナイキ社の新製品のシューズが使用される可能性もあり、今回の東京マラソンはハイレベルな戦いと好記録が期待できる条件がそろいつつある。高速レースの先に笑顔を見せるのは果たして誰だろうか。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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