“リニューアル菅野”の武器は縦の変化!? 新フォームで復活&進化&金メダル目指す

ベースボール・タイムズ

副産物が新たな武器になる!?

変化球にも進化の予感……ボールを受けた捕手の小林誠司(右)も「曲がりが強くなった」 【写真は共同】

 新フォームで最も良くなったのは「バランス」だと言うが、それだけではない。左足をひねる形で持ち上げ、左肩は開かない。ボールへの力の伝わり方が変わったことで、これまで持っていた変化球に進化の予感が漂っている。

「カーブが良くなったなと。スピンの量も増えていると感じますし、曲がりという面でも大きくなったのかなと思う」

 昨季までもカーブは投げていた。だが、割合としては少なく、昨季の球種割合を見ると全体の9%に過ぎない。ストレートが30%、スライダーが22%であり、以下、カットボール15%、シュート系(ワンシーム、ツーシームを含む)14%、フォーク10%と続く。カーブは「基本的にはカウント球や遊び球で使っていた」が、新フォームの導入によって「(小林)誠司は『曲がりが強くなった』と言っていた」と進化。菅野自身も「十分に勝負できるボールだなと思う」と手応えを感じている。

 カーブだけではない。「縦の変化球が良くなりそうだという予感はしていました」と菅野は言い、4日のブルペンでそのフォークを解禁して「よく落ちていた」と確かめた。横変化のスライダーだけでなく、縦変化のカーブ、そしてフォークでも空振りを奪えるようになれば、まさに縦横自在のピッチングができるようになる。

フォークボールを有効に使えるか

東京五輪の金メダル獲得へ、菅野は“日本のエース”として不可欠な存在だ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 この縦変化が、より有効になるのは、外国人打者を相手にした時だろう。かつて野茂英雄がフォークを武器にメジャーの舞台で三振の山を築き、佐々木主浩は守護神に君臨。田中将大は宝刀スプリットで絶賛活躍中だ。過去のWBCを振り返っても、上原浩治、岩隈久志、千賀滉大がフォークを決め球にして好投。優勝した昨秋のプレミア12でも、山本由伸、甲斐野央のフォークに、他国の打者は手も足も出なかった。菅野が、彼らと同じようなフォークボールを手にすることができれば、もはや国際舞台、東京五輪での活躍は約束されたようなものだ。

 常に上を目指し、変化を恐れない姿勢は、これまでと変わらない。その菅野に対し、侍ジャパンの稲葉篤紀監督は、千賀滉大と並んで「絶対に必要」と絶大な信頼を置いている。実績は申し分ない。あとは投球フォームとコンディションの調整。これからキャンプでのブルペン、実戦登板、さらにオープン戦を経て、シーズンの開幕までどう進化して行くのか。そして復活のシーズンを過ごし、日本のエースとして、7月29日の東京五輪開幕戦を迎えられるか。

「全体的に課題はある。1日1日、ステップアップしていけたらなと思います」。その視線の先には、金メダルの輪郭が、しっかりと見えているはずである。

(文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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