連載:“BIG3”に続くのは? ネクスト・ジェネレーション

テニス界の“ヒール”か“ヒーロー”か 二面性を持つメドベージェフの魅力

内田暁
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4大大会初出場は2017年の全豪オープン。勝利の美酒に酔いしれるのは今大会か、それとも―― 【Getty Images】

 ATPマスターズ2大会優勝に、グランドスラムのファイナル進出。台頭するネクスト・ジェネレーションの中から頭一つ抜け出して「BIG3」を猛追するのが、リスクを恐れず、ブーイングさえものともしない、不思議なカリスマ性を持った長身のロシア人である。

母国の格言が、彼に初のマスターズタイトルをもたらした

準決勝でジョコビッチを下し、決勝ではゴフィンに勝ってマスターズ初優勝を果たしたウエスタン・アンド・サザン・オープンにて 【Getty Images】

「ロシアにはね、『リスクを恐れる者に、シャンパンを飲む資格はない』っていうことわざがあるんだ」

 昨年8月――。米国のシンシナティで開かれたATPマスターズ1000を制した時、ダニル・メドベージェフはチャーミングな笑みを浮かべながら、試合の分水嶺(ぶんすいれい)をこう振り返った。それは勝利まであと1ゲームと迫りながら、自らの消極的なプレーもあって相手のダビド・ゴフィン(ベルギー)に2連続でブレークポイントを握られた場面。続くポイントでもファーストサーブが入らず、彼はさらにいら立ちを募らせた。

 実はこの時、前日に世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)とフルセットの激闘を演じた彼の肉体は、限界に近かった。暑さに体力を削られ、両足は痙攣(けいれん)に襲われていたという。だが彼はポーカーフェースでその事実を覆い隠しながら、ある一つの決断を下した。
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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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