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4年ぶり再戦を制すのは順心か、神村か
高校女子サッカー選手権・決勝を占う
決勝は4年前と同じカード。藤枝順心(上)と神村学園(下)、“リターンマッチ”を制すのはどちらか
決勝は4年前と同じカード。藤枝順心(上)と神村学園(下)、“リターンマッチ”を制すのはどちらか【スポーツナビ】

 新年を飾る、第28回全日本高校女子サッカー選手権も残すところ、決勝戦だけ。その舞台に上がるのは強豪校がそろった“死のゾーン”を踏破した藤枝順心(静岡)と、4試合すべてをPK戦に入ることなく、勝ち上がってきた神村学園(鹿児島)だ。両校は4年前にもノエビアスタジアム神戸で行われた決勝戦を戦い、高校女子サッカー選手権史上に残る激闘を演じた(藤枝順心が3-2で勝利)。4年ぶりの再戦を制すのは、果たして……。

高い戦術遂行能力で、4度目の頂点へ

 昨年度女王の星槎国際湘南(神奈川)、ライバル日ノ本学園(兵庫)などを破って決勝へ進んだのが、静岡県代表の藤枝順心だ。


 今季が始まる前、チームには希望があふれていた。3年生には、2年前の優勝時に主力を担った選手も多く、他校よりも上積みは大きい。「ボールを回すことは例年と同じか、それ以上。『私たちが“順心最強世代”になろう』と選手は口にしていた」(藤枝順心・多々良和之監督)。


 だが、インターハイ予選では静岡県予選の組み合わせを決める上位リーグで、磐田東、常葉大橘に勝てず、3位に終わった。


「(上位リーグの)磐田東戦を見た方なら『今季の順心は(優勝の芽が)ないな』と思ったはず。一昨年は点が取れて、相手を抑えて、優勝できた。昨年も点を取れなかったが、守ることはできた。今年は点が取れない上に、守り切れない」


 夏1回、冬3回の全国制覇を成し遂げた名将の危惧は的中する。


 インターハイでは1回戦で柳ヶ浦(大分)と対戦。オウンゴールで先制点を挙げる展開にも、チームは乗り切れない。柳ヶ浦の反撃に受け身となり、同点、逆転ゴールをあっさりと献上。「キックオフから最後まで一度もエンジンがかからなかった。私が指揮を執り始めてからこんな試合は初めて」と多々良監督。攻守両面でチームを支える金子麻優も「(昨年の)選手権で1回戦負け、インターハイも1回戦負け。全くダメでした」と最悪の時期を言葉少なに振り返った。


 ここで指揮官は、優勝時のチームが持っていた高度な作戦遂行能力を選手に求めた。東海大会出場権が懸かる秋の静岡県予選・準決勝では「PK戦まで行ってもいいから、絶対に失点するな」と指示。堅陣を敷く磐田東の防御に手を焼き、延長戦までもつれたが、最後は谷穂花が決勝ゴールを奪った。


 多々良監督は珍しく手放しで選手を褒めた。


「今年、最大のビッグゲーム。これでチームが変わる。全国でも優勝を十分に狙えるポテンシャルはあるんだから」


 年代別代表で活躍し、ディフェンスリーダーを務める長江伊吹も手応えを口にした。


「主導権は握れるけどゴールを奪えず、焦れた守備陣の集中力が切れるというのが、これまでの負けパターン。今日は(失点)ゼロで抑えるというプランでしっかりと抑え切れた」


 その後の東海地区予選では、選手層を厚くするために控え選手を起用しながら2位で通過。そして迎えた選手権では、1回戦で宇都宮文星(栃木)を5-0で下し、2回戦も畳み掛ける攻撃で星槎国際湘南に3-0と快勝。準々決勝の日ノ本学園戦、準決勝の修徳(東京)戦は、苦しみながらも全員が集中を切らさず、ケガ人等のアクシデントも乗り越えた。


 大会前の下馬評は決して高くなかったが、「一戦、一戦をしっかりと戦っていく」(長江)と地に足をつけて臨んだチームは、2年ぶり4回目の選手権優勝まで、あと1勝に迫っている。

攻撃力を高めて4年前のリベンジに挑む

神村学園は堅守に加え、攻撃力にも磨きをかけた。4年前のリベンジを狙う
神村学園は堅守に加え、攻撃力にも磨きをかけた。4年前のリベンジを狙う【西森彰】

 その藤枝順心に挑むのが、鹿児島県代表・神村学園だ。あえて「挑む」と記したのは、同一決勝カードとなった4年前の大会で藤枝順心に敗れていたからだ。


 逆転、そして再逆転。高校女子サッカー選手権の決勝戦史上に残るゲームを戦い抜いた直後、寺師勇太監督の口からは「素直に完敗です。単純にうまいだけでなく、運動量でも、球際の強さでも、順心さんが上回っていました」という言葉が出た。


 優勝するためにすべての面でレベルアップの必要性を痛感した指揮官は、伝統のフィジカル、走力に、テクニックと戦術のエッセンスを加えながら、最適バランスを探り続けてきた。今季もインターハイまでは鍛え上げた走力と、手堅い守備で臨んだが、1回戦、2回戦ともスコアレスドローからのPK戦。優勝した十文字(東京)にPK負けを喫した。


 それ以降、方針を転換し、「夏以降は練習でもほとんど攻撃しかやってこなかった」(寺師監督)。年代別代表の1年生・愛川陽菜は「相手と相手の間でポジションを取って、自由にプレーしろと言われています」。


 一方で、トップ下でもプレーできる菊池まりあはボランチに置いて、チームバランスに保険をかけた。「もう少し、前にかかりたいという気持ちはありますが、やっぱり守備の部分も必要だと思う。どこを任されても自分はやる。プレーと声で鼓舞するというのは意識しています」と口にする、菊池の高い献身性も買ってのことだろう。


 そのかいもあって、鹿児島県予選、九州地区予選の6試合すべてで複数得点を奪い、無失点で突破。今大会は強豪校の多くが逆山に入り、常盤木学園(宮城)も1回戦で敗退したため「周りの人からは『これで勝っていけないんじゃ、困るよね』という雰囲気も出ていた」と寺師監督。そうした重圧も感じながら、準決勝まで4試合すべてをレギュラータイム(準々決勝までは40分ハーフ、準決勝は45分ハーフ)で勝利した。


 無失点記録は1回戦で途絶えたが、チーム全体で労を惜しまないハードワークは健在。指揮官も「これ(失点)をきっかけに『気を引き締めろ』と言えたんだから、今後に向けてはいい材料だった」と笑って流せるほど、チーム状態に自信を持っている。


 守備の重要性を再認識してよみがえった藤枝順心。堅守に攻撃を上乗せしてきた神村学園。対照的なプロセスを踏んだ2チームが優勝を争う。

西森彰

なでしこジャパン、なでしこリーグの取材は2020年で19年目に突入。なでしこジャパンが戴冠したドイツ大会をはじめ、女子ワールドカップは4大会を現地で取材。『サッカーダイジェスト』を中心に執筆し、姉妹誌『高校サッカーダイジェスト』には、13年の創刊当初から携わっている。18年に創設されたバロンドール女子部門には2年連続で投票。

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