【私と家族の選手権】世界の舞台へと駆け上がった高校時代 〜杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)

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【 ©JFAnews/SMD】

全国の舞台で活躍した選手はどのような家庭環境で育ち、成長を続けたのか。ここではなでしこジャパン(日本女子代表)として活躍する杉田妃和選手(INAC神戸レオネッサ)の家族との物語をお届けします。

決勝までたどり着いた2度目の高校女子選手権

故郷の福岡県北九州市を離れ、静岡県の藤枝順心高校に進学した杉田妃和。親元を離れての寮生活だったが、「同学年のチームメートも大勢いましたし、みんなと一緒の時間を過ごしているうちに慣れました」と、新たな環境にもすぐに適応した。

両親とのコミュニケーションはたまに電話で話す程度だったそうだが、父親の徹氏は会話の中から我が子の急成長ぶりを感じ取ったという。

「自立心はものすごく成長していると感じましたね。電話で日常生活の話をしたときに、『家にいたらそんなことはやらないだろうな』ということまで自分でやっているようでした。私生活で自立しているし、それに伴ってサッカーの面でも自分の考えをしっかり出せるようになったんだろうな、と思いました」

15歳の時に2012年のFIFA U-17女子ワールドカップアゼルバイジャン2012に出場するなど、年代別代表でも活躍を見せ始めていた杉田だったが、年始に行われる全日本高等学校女子サッカー選手権大会は、重視する大会の一つだった。

1年次の第21回大会は、準々決勝で宮城県の常盤木学園高校と対戦してPK戦の末に敗退。「(1年の時に)一度、経験していたので『勝ちたい』という気持ちが強かった」という2年次は、準決勝で再び常盤木学園と対戦し、1-1からのPK戦で雪辱を果たした。61分に先制されながらも後半アディショナルタイムに同点に追いつき、PK戦では1人目の杉田を含めたキッカー全員が成功させて4-2の勝利を収めている。ただ、決勝では日ノ本学園高校(兵庫)に1-4で敗れ、頂点に立つことはできなかった。

世界一を経験も涙で終わった高校3年間

2年から3年に進学するタイミングの2014年3月、杉田は再びFIFA U-17女子ワールドカップに出場した。2年前の大会ではメンバーの1人という立ち位置だったが、この時は10番を背負い、キャプテンマークを巻いての出場。世代を牽引する存在として世界の舞台に立った杉田は5ゴールを挙げる活躍で日本を頂点へと導き、大会MVPを獲得する。「決勝前日の夜、普通は緊張するものなんでしょうけど、すごく楽しみだったんですよ」と振り返るとおり、決勝のスペイン戦でも平常心でプレーし、2-0の快勝へと導いた。「大きい相手、強い相手と対峙しても委縮せず、自分を出す」という幼少期からの父親の教えを、忠実に実践した試合だった。

“世界一”の称号とともに藤枝順心に戻った杉田は、キャプテンとして高校生活最後の1年に臨んだ。夏の高校総体は準々決勝で日ノ本学園、皇后杯は3回戦でジェフユナイテッド千葉レディースに敗れ、最後の選手権を迎える。藤枝順心は1回戦、2回戦、準々決勝と順調に勝ち上がる。準決勝の相手は三度、常盤木学園。藤枝順心は78分に先制点を奪ったものの、後半アディショナルタイムに同点に追いつかれてしまう。

「アディショナルタイムがあれほど長く感じるのは初めて、という試合でした。1-0で勝っていて、『早く終わって!』と思っていたんですが……残り数分で点を取られてしまった。最後はすごく押されていて、時間が長く感じましたね」

3年連続のPK戦。サドンデスに突入して6人が蹴り合う激闘の末、4-5であと一歩及ばず、藤枝順心でタイトルを獲得することはできなかった。

ところで、選手権は杉田の高校在学中、両親が直接、応援に訪れたほぼ唯一の大会だったという。普段はチームメートが驚くほど仲の良い家族でありながら、試合の前後に会話を交わすことはほとんどなかったそうだが、徹氏は我が子の成長を確かに感じていた。「サッカーは楽しくないと続けられない。『勝てばいい』というサッカーは好きではない」と語る父親は、娘の高校最後の大会をこのように総括した。

「キャプテンとして勝たせたかったという思いがあり、悔し涙も出たと思うんですけど、親としては立派だったな、としか思わなかったです」

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