連載:マンガ「GET UP!」〜青山敏弘物語〜

青山敏弘がマンガで伝えたかったこと 10代にエール「ガムシャラにぶつかって」

スポーツナビ

プロ16年…そのキャリアは苦難の連続

青山敏弘のマンガには彼が培ってきたメッセージがあふれている。「多くの子どもたちに読んでもらえたら」 【(C)SANFRECCE】

 こんな言葉を耳にしたことがあるだろう。

「神は乗り越えられる試練しか与えない」

 サンフレッチェ広島でキャプテンマークを巻く青山敏弘は、これまで幾度も試練にさらされてきた。それも乗り越えられないのでは、と思うほどに……。

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 プロになり16年目のシーズンを終えたが、彼のキャリアを紐解けば、苦難の連続だった。プロ2年目に左膝前十字靭帯を断裂すると、シーズンを棒に振った。2006年にミハイロ・ペトロヴィッチ監督(当時)が率いてからは出場機会を得るようになったが、07年には右足を骨折し、広島はJ2降格の憂き目に遭った。その後も不運は続き、09年には左膝にメスを入れた。

 近年も同様である。痛めていた右膝の状態が思わしくなく、今年1月、ついに体は悲鳴をあげた。復帰したのは7月である。

 輝かしい3度のJ1優勝や14年ブラジル・ワールドカップ出場という功績が、かすんでしまうのではないかと思うほど、そのキャリアは試練に満ちている。

 それでも青山は、ピッチに戻ってくれば、いつも存在感を発揮する。他が真似できない決定的な縦パスで決定機を演出し、33歳になった今なおハードワークでチームをけん引する。まるで逆境も、困難も、そして試練をも打ち払うかのように、ピッチに戻ってきた彼は、プレーでこちらの目をくぎ付けにする。

 その根っこには、岡山県作陽高校時代に培った礎があるのだろう。彼の原点とたどれば、高校2年生で迎えた全国高校サッカー選手権県大会決勝で、自らの得点が見逃され全国の切符を逃した苦い経験があった。選手権にすべてを懸けていた高校生にとって、それは受け入れがたい出来事だったはずだ。だが、そうした悔しい経験も、恩師、仲間といった周りの支えや自分自身と向き合うことで、彼は乗り越え、自分の財産にしてきた。

 そんな青山敏弘の物語がマンガ化される。そこには彼が培ってきたメッセージにあふれていることだろう。

 いつだったか、彼はこんなことを言っていた。

「家族、特に子どもができてから少し考え方が変わったんですよね。守るべきものができたので」

 周囲の支えが彼を突き動かしてもいる。家族、恩師、仲間、チームメート、そしてサポーター……ファンサービスでも訪れた人から愛される彼の人間性は、きっと、そうした試練を乗り越えた経験からにじみ出るものに違いない。

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「困難に直面している人は周りを見て」

作陽高校で得た経験は何よりの財産。仲間に支えられ、困難を乗り越えてきた 【写真は共同】

――今回、自身の経験がマンガ化されますが、率直にどう感じていますか?

 自分が子どものときに、『キャプテン翼』や『シュート』などのサッカーマンガを読んで、さらにサッカーに夢中になりました。自分がそういう立場になるとは思ってもみなかったので、自分の経験がマンガ化されることは、すごくうれしいです。多くの子どもたちに読んでもらえたらいいなと思います。

――マンガでは、青山選手が作陽高校でサッカーに励んでいたころの話が描かれていますが、あらためて高校時代に得たこと、学んだことはありますか?

 一番は、親友ができたこと、仲間ができたことですね。彼らとは今も連絡を取り合いますし、会う機会もある。会えば、自然と当時の思い出話になり、笑ったり、さすがに泣きはしないですけど、いつも話は尽きないですよね。今もそうした時間を過ごせるのは、あの頃、サッカーを一生懸命に取り組み、時には一緒になってバカなことをやったりと、いい思い出があるから。振り返ると、高校サッカーって良かったなって思います。

 選手権では、1年生のときから試合に出させてもらって、ゴールを決めたことが自信になりましたし、それが2年生、3年生へとつながり、僕の基礎を作ってくれた。それが1年生のときの選手権の思い出ですよね。2年生の選手権では、マンガにも描かれていますけど、「幻のゴール」で悔しい思いをしました。でも、周りの方々や自分たちを支えてくれる人たちの姿を見させてもらったことが、今の自分の糧にもなっています。

(幻のゴールは)自分にとってマイナスな部分だったかもしれないけど、選手権は本当に大きな経験になりましたよね。3年生では、再び全国大会に出場しましたが、1回戦で敗退しました。でも、そうした経験があったから、(力を)出し切ることができた。

 選手権は高校3年間のすべてを出せた大会。そこに向かって行くパワーだったり、思いだったりというのは、やっぱり選手権ならでは、だったかなと感じています。まさに選手権に青春を捧げた、いい思い出ですよね。
――高校時代には、さまざまな困難や苦難に直面したと思いますが、どう乗り越えてきましたか?

 やっぱり自分ひとりでは対処できないですし、それまでに頑張ってきた仲間だったり、支えてくれた先生、さらには両親だったりと、周りのサポートがなければ、困難を乗り越えることはできなかったと思っています。特に仲間は、時に正面からぶつかって、正面から意見を言ってくれる。それくらいの思いでサッカーをやっていましたし、それくらい本気でぶつかっていったので、乗り越えることができたんだと思います。

 ひとりでは何もできないんですよね。そういう仲間、支えてくれる人がいてこそ。だから、困難に直面している人には、周りを見てほしいなって思います。

――マンガの題材になっている高校時代を、まさに今、過ごしている10代にエールをお願いします。

 何事もガムシャラにやってほしいですね。正解なんて、最初から分かるわけがないですし、自分で作るしかない。最初はうまくいかなくて当然だと思うし、試行錯誤するなかから、きっと正解は見えてくる。だから、何にでもチャレンジして、何にでもぶち当たって、初めてそこから成功する何かがつかめると思うので、何事にもガムシャラにぶつかっていってほしい。実際、自分がそうだったので、きっと、みんなにもできると思います。
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