“ランパード2世”と“アザールの後継者” 新生チェルシーの好調を支える2人の逸材

山中忍
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エースのアザールが退団したチェルシー攻撃陣にあって、このところ眩い輝きを放っているのがマウント(左)とプリシッチ(右)だ 【写真:ロイター/アフロ】

 メイソン・マウント、20歳。クラブ生え抜きの攻撃的MFで、今季、監督としてチームに戻ってきたフランク・ランパードに比較される。かたやクリスティアン・プリシッチ、21歳。今夏唯一の新戦力であるウイングで、入れ替わりで去ったエデン・アザールの後継者と目される。政権交代、エースの退団と大きな変化があった今季のチェルシーを、同世代のCFWタミー・アブラハムやMFジョルジーニョらとともにけん引するのが、この2人のヤングタレントだ。7節から6連勝を飾り、プレミアリーグの3位に浮上してきた好調なチームを支える両雄に迫る。

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「憧れの選手」を思わせる得点能力

マウントの最大の魅力は、現役時代のランパードを想起させる得点能力。トップ下に加え、ウイング、インサイドハーフと複数のポジションに対応できる汎用性も特長だ 【写真:ロイター/アフロ】

 シーズンの約3分の1、12節まで消化したプレミアリーグで3位につけるチェルシー。監督がマウリツィオ・サッリからフランク・ランパードに代わったチームでは、昨季と同じ攻撃型路線でも、よりスピーディーかつダイナミックで躍動感のあるスタイルが、予想以上の早さで形になりつつある。そのランパード流の「申し子」とも言うべき存在が、メイソン・マウントだ。

 20歳の攻撃的MFは、マイボール時には「勇気」、相手ボール時には「奮励」、戦術面では「適応」をポイントに挙げる新監督が求める要素を全て持ち合わせている。果敢なプレッシングによるボール奪取から、自らシュートに持ち込んで決めた2節レスター戦でのプレミア初ゴール。その翌週、ウォームアップ中にチームメートが負傷したことで、当初予定されていた4-2-3-1のトップ下ではなく、4-3-3の前線左サイドで先発したノーウィッチ戦でのゴールなどが、マウントの能力を示す好例だ。

 最大の魅力は、指揮官の現役時代を思わせるその得点能力の高さ。U-8からアカデミーで育成されたチェルシーのクラブ内では、早くから「ランパード2世」と目されていた。

 その認識がファンの間でも広まったのは、2015-16シーズンのFAユースカップ(U-18)決勝からだろう。マンチェスター・シティと対戦したファーストレグで、ボックス内に走り込み、右からの折り返しをダイレクトでゴール右下隅に蹴り込んだ。多くのファンがこの得点シーンを見て、MFにしてクラブ歴代得点王であるランパードの姿をマウントに重ねたのだった。

 マウントにとってのランパードは、本人曰く「ずっと手本にしてきた憧れの選手」である。プロのスタートラインで、その人物の愛弟子となったのだから、チェルシー入団は正解だったと言える。

 南岸の町ポーツマスで生まれたマウントは、幼い頃から実父が指導するセミプロチームのユースでプレーし、6歳の時にチェルシーや地元のポーツマスなど複数のプロクラブから誘いを受けた。

 しかし、等級分けされているプロクラブの下部組織で、カテゴリー1のチェルシーとカテゴリー3のポーツマスでは、ハードとソフトの両面で育成環境には歴然たる差がある。だが反面、1軍昇格の門はカテゴリー1のほうが格段に狭い。とくに当時のチェルシーは、ジョン・テリー(現アストン・ヴィラ助監督)以外に久しく生え抜きのレギュラーが生まれていなかったこともあり、このとき父親は他クラブへの入団を薦めている。それでもマウントはチェルシーを選び、入団後は「テリーに続いてみせる」との決意を胸に、上を目指し続けた。
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著者プロフィール

1966年生まれ。青山学院大学卒。西ロンドン在住。94年に日本を離れ、フットボールが日常にある英国での永住を決意。駐在員から、通訳・翻訳家を経て、フリーランス・ライターに。「サッカーの母国」におけるピッチ内外での関心事を、ある時は自分の言葉でつづり、ある時は訳文として伝える。著書に『証―川口能活』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『フットボールのない週末なんて』、『ルイス・スアレス自伝 理由』(ソル・メディア)。「心のクラブ」はチェルシー。

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