【UFC】UFC月間レポート:2025年2月
サウジアラビアのリヤドに始まり、オーストラリアはシドニーからホームのラスベガス、そしてシアトルへと舞台を移す中で、2月には数多くの卓越したパフォーマンスや、記憶に残るシーンが見られた。いつものように、その中でも際立っていた試合がいくつかあり、カレンダーをめくるたびにそうしているように、そういった試合をここで紹介していこう。
2025年2月の月間レポートは以下の通りだ。
ブレイクアウト・パフォーマンス:ナッソージン・イマボフ(UFCファイトナイト・サウジアラビア)
その答えは、力強く、そして明確な“イエス!”だった。29歳のイマボフは、第2ラウンド開始わずか30秒で“ザ・ラスト・スタイルベンダー”ことアデサニヤをテクニカルノックアウト。4連勝を飾り、ミドル級ランキング1位の座を手にした。
2024年にイマボフはロマン・ドリーゼ、ジャレッド・キャノニア、ブレンダン・アレンを次々と撃破し、すでにトップ10、あるいはトップ5の実力者であることを証明していた。しかし、過去を振り返れば、トップ戦線に迫りながらも、真のタイトル挑戦者になれなかったファイターは数多い。この試合は、イマボフがその壁を乗り越え、コンテンダーとしての確固たる地位を築くための絶好のチャンスだった。2023年の頭にショートノーティスで挑んだショーン・ストリックランド戦では敗れたものの、その後のストリックランドの快進撃を考えれば、価値ある経験となったことは間違いない。そして今回、アデサニヤという実績あるスター選手を下し、実際にオクタゴンで腕を上げた瞬間には、特別な意味があった。
しかも、イマボフが元王者を退けたその内容こそ、パフォーマンスの高さを証明している。接戦を制した判定勝ちではなく、第2ラウンド開始わずか30秒での鮮烈なフィニッシュだった。
2月はミドル級の試合が大きな注目を集めたが、その中で最もインパクトを残したのは間違いなくイマボフだ。この勝利により、ランキング1位のコンテンダーとして3月を迎えることとなった。
特別賞:ヴィニシウス・オリベイラ、クイラン・サルキルド、ガブリエル・サントス、タリソン・テイシェイラ、ホセ・ミゲル・デルガド、オースティン・ヴァンダーフォード、マンスール・アブドゥル・マリク、ジェアン・シウバ
サブミッション・オブ・ザ・マンス:ドンテイル・メイエスを決め技で仕留めたヴァルテル・ウォルケル(UFCファイトナイト・ラスベガス)
プロレスラーには決め技があるが、MMAファイターにはない。しかし、ヴァルテル・ウォルケルには、その常識は当てはまらないようだ。
ブラジル出身のヘビー級ファイターであるウォルケルは、2試合連続でヒールフックによる第1ラウンドフィニッシュを達成。昨年のジャスティン・タファ戦ではバーバルタップアウトを奪い、そして2月のドンテイル・メイエス戦でも同じ技で勝利を収めた。しかも、パースで行われたUFC 305ではラウンド終盤に勝負に出たのに対し、今回は序盤から明確な意図を持って狙いにいった一撃だった。
一度決めるだけなら、それは斬新で見る者を興奮させる。しかし、2試合連続でヒールフックを狙い、確実に決めたことで、この技はウォルケルの必殺技として確立された。今後、対戦相手は警戒せざるを得ないだろう。かつてアレクセイ・オレイニクがエゼキエルチョークやスカーフホールドからのサブミッションを得意としていたように、ウォルケルもまた、その域に達しつつある。次戦でもこのフィニッシュを再現できるのか、注目が集まる。
“ザ・ファイティング・ウォルケル・ブラザーズ”のエネルギッシュな弟分は、兄のジョニー同様、オクタゴンに登場する度に見逃せない試合を展開することで知られている。次戦で再びヒールフックを極めるようなことがあれば、この決め技にふさわしいクールなネーミングを考える必要があるかもしれない。
特別賞:サントス vs. ジャック・ジェンキンズ、ガブリエル・ボンフィム vs. ケイオス・ウィリアムズ、メルキザエル・コスタ vs. アンドレ・フィリ、イオン・クテラバ vs. イボ・アスラン
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:リッキー・シモンによる圧巻の凱旋試合(UFCファイトナイト・シアトル)
リッキー・シモンの右拳が炸裂した一撃によってジャビッド・バシャラートがキャンバスに沈んだ瞬間、クライメット・プレッジ・アリーナは地鳴りのような歓声に包まれた。そのまま地元ファンの大歓声を背に、シモンは久々の勝利を祝った。
約8年ぶりに地元のオクタゴンに戻ってきた3連勝中のシモンは、試合序盤のグラップリングでバシャラートを思うようにテイクダウンできず、苦戦を強いられた。しかし、開始3分を過ぎたあたりで流れが変わる。打撃の距離で向き合った2人。軽くジャブを放ったシモンが、続けざまに鋭い右ストレートを一直線に打ち込み、バシャラートの顎を撃ち抜いた。その瞬間、バシャラートはねじれるように崩れ落ち、キャンバスに沈んだ。
シモンは追撃の打撃を加えたものの、すでに勝負は決していた。
シモンにとって、この勝利はまさに待ち望んでいたものだった。バンタム級の実力者として長年戦い続けながらも、ソン・ヤドン、マリオ・バティスタ、ヴィニシウス・オリベイラに敗れ、トップ15から陥落。しかし、これ以上ないほど鮮烈なフィニッシュを決めたことで、今なお経験豊富で危険なベテランであることを強烈に印象づけた。ランキング復帰を狙い、そこに割って入ろうとする新鋭たちを迎え撃つ準備は万全だ。2025年はまだ始まったばかりだが、これまでの中で最も鮮やかなフィニッシュのひとつだった。
特別賞:テランス・マッキニー vs. ダミア・ハゾビック、シャミル・ガジエフ vs. トーマス・ピーターセン、クイラン・サルキルド vs. アンシュル・ジュブリ、イマボフ vs. イズラエル・アデサニヤ、ホセ・ミゲル・デルガド vs. コナー・マシュース、モデスタス・ブカウスカス vs. ハファエル・セフケイラ
ファイト・オブ・ザ・マンス:熱戦を繰り広げたロン・チューとコーディ・スティール(UFC 312)
格闘技は時に奇妙な展開を見せる。かつて共にトレーニングを積み、深い友情で結ばれた2人が、15分間にわたって激しい打ち合いを繰り広げ、試合終了のホーンが鳴ると笑顔で抱き合う――そんな戦いがある。
序盤から激しい打ち合いになることは明白だった。ロン・チューは冷静に試合を組み立て、精度の高い打撃を選択。一方、UFCデビュー戦となったスティールは、すべての打撃を全力で打ち込み、壮絶なスラッガーファイトを展開した。結果、24歳のベテランであるロン・チューが勝利を収め、両者ともボーナスを手にする試合となった。
今後、このカテゴリーでは、テクニカルな駆け引きが際立つ試合がファイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれることもあるだろう。しかし、時には互いに被弾を覚悟で突き進む殴り合いこそ、最高の1戦に値することもある。この試合は、まさにその典型だった。
特別賞:ファレス・ジアム vs. マイク・デイビス、ヴィニシウス・オリベイラ vs. サイード・ヌルマゴメドフ、アロンゾ・メニフィールド vs. ジュリアス・ウォーカー、ロブ・フォント vs. ジェアン・マツモト、アンソニー・ヘルナンデス vs. ブレンダン・アレン
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