家族のサポートを力に変えて 小倉理恵はパラバド初代女王を目指す

荒木美晴

寂しい思いをさせないために始めた「交換ノート」

娘との「交換ノート」はうれしいと話す 【スポーツナビ】

 仕事と合宿や遠征で自宅に不在がちとなり、「子どもたちには寂しい思いをさせている」と話す小倉。特に今年は大会の結果がパラリンピック出場に影響する重要な1年となるため、どうしても家に居ない時間が増える。小学生の長女はまだお母さんが恋しい年ごろだ。そこで互いの寂しい気持ちを解消しようと、1年ほど前から母と娘の「交換ノート」をしているそうだ。

「交換日記みたいに、留守番をしている娘が今日あったこととかを書いて、それに私が返事をしたり、自分のことを書いたりしてるんです。私としてはうれしいですね。ただ、娘の方はもう飽きてきているみたい(笑)」

中国勢にも手応えを得る

家族の応援を受け、東京パラを目指す 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 東京2020パラリンピックの出場権は、今年3月のトルコ国際から来年3月のスペイン国際までの対象13大会で獲得するポイントランキングで決まる。地元開催となる11月のジャパン国際も対象大会のひとつで、パラ本番でも使用される国立代々木体育館が会場となる。小倉もエントリーする予定で、ここで結果を残して確実にポイントを獲得したいところだ。
 女子WH2で世界をリードするのは中国だ。世界選手権ではシングルスのベスト4のうち、小倉以外の3人は全員中国の選手だった。準決勝で小倉は中国3番手のリ・ホンヤンと対戦し、ストレートで敗れてしまったものの、これまでは大きく点差をつけられていたものが、第1ゲームは17点まで追い上げるなど、競うことができた。

「負けたのでまったく満足はしていませんが、これまで歯が立たなかった選手に対して互角に戦えるようになった点は手応えを感じています。ただ、互角にやっている以上は勝っていかないといけない。技術的にも精神的にも彼女たちに負けていた部分があるので、そこが反省点です。ジャパン国際では絶対にリベンジしたい」と言葉に力を込める。

 また、日本代表の山崎将幸コーチは「小倉選手はチェアワークに頼らず、相手の動きを見ながら嫌がるショットを選択し、打てるようになってきた。中国の選手と競えるようになったのは成長だと思う」と話し、ジャパン国際でも表彰台以上の成績を期待する。

 育児と競技の両立に悩み、選手を辞めようと思ったこともある。だが、いまは家族の応援を支えに、東京パラまで突っ走る覚悟だ。今年はジャパン国際が終われば、国内で調整する予定。年末年始は久しぶりに家族旅行を予定しているといい、そこでしっかりとリフレッシュし、ポイントレース終盤に向けてギアを上げていくつもりだ。

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著者プロフィール

1998年長野パラリンピックで観戦したアイススレッジホッケーの迫力に「ズキュン!」と心を打ち抜かれ、追っかけをスタート。以来、障害者スポーツ全般の魅力に取り付かれ、国内外の大会を取材している。日本における障スポ競技の普及を願いつつマイペースに活動中

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