連載:井上尚弥、さらなる高みへ

伊藤雅雪がWBSS決勝を展望 「確率が高いのは、井上の3R以内KO」

船橋真二郎

井上の“倒し方”が問われる対戦

前WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪が語る、WBSS決勝の展望は? 【写真:ロイター/アフロ】

「井上君がどういう倒し方をするか。そこが問われるカードだと思います。海外で『イノウエ、イノウエ』ってなっているのは、あれだけ芸術的な倒し方、豪快な倒し方をしているから。もし今回、不発だったら、『なんだ、普通の選手なの』ってなっちゃう可能性もゼロじゃない」

 いよいよ今夜、WBA・IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(大橋・18勝16KO無敗/26歳)と、世界5階級制覇でWBA同級スーパー王者のノニト・ドネア(フィリピン・40勝26KO5敗/36歳)の大一番、WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)バンタム級決勝がさいたまスーパーアリーナでゴングとなる。

 昨年7月、アメリカ・フロリダ州キシミーでベルトを奪取。今年4月には、アメリカ最大手のトップランク・プロモーションと3年契約を結び、これまでロサンゼルスで何度もスパーリング合宿を行うなど、現地事情に詳しい前WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(横浜光・26勝14KO2敗1分/28歳)が続ける。

「アメリカに行って僕が感じるのは、バンタム級の需要はそこまでじゃないっていうこと。逆に言えば、ここまで名前が知られているのがハンパないんですけど。だから、井上尚弥がこの階級で世界のほんとのヤバイ奴になっていくには、どう倒すか。そこが求められると思います」

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“特別な何か”を感じなかったドネアとのスパーリング

伊藤は2年前にドネアとスパーリングをした時、「特別な何かをほとんど感じなかった」と振り返る 【船橋真二郎】

 井上の倒し方ばかりをクローズアップするのは、ドネアの現状にも理由がある。

「もちろんリスペクトされるべき選手ですけど、どうしてもピークを越えたオールドボクサーと見られていると思うんで。よくドネアはあれだけのキャリアがあるからって言いますけど、並みの選手には通じても、井上君はちょっと抜けちゃってますからね。今のドネアとやるとなっても『イノウエが倒すでしょ』って、(海外の評価、期待は)そのへんまで来ていると思います」

 ドネアは伊藤にとっても特別な存在だった。特にフィリピーノ・フラッシュがまばゆい閃光を放っていたフライ級からバンタム級時代。「その頃、好きな選手は誰かって聞かれたら、真っ先にドネアって答えるぐらい大好き」だった。

「映像を見て、勉強した選手でもありますね。ドネアって、カウンターの名手じゃないですか。あの左フックだけじゃなくて、左アッパーも、右ストレートも全部がカウンターじゃんっていうぐらい。普通なら、よけてから打つ、なんですけど、全部一体というか、よけながら打つ。目がすごくいいし、タイミングが抜群に良くて、それこそ全部、予知して打っているのかなっていうぐらいのイメージでしたよね」

 だが2年前、来日したドネアと横浜光ジムでスパーリングをした時は、特別な何かをほとんど感じなかったという。

「もちろん強いですよ。でも、パンチをとっても、スピード、タイミングをとっても『うわっ、ヤベエ』みたいなサプライズは、正直なかったです」

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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