アンプティサッカー“一本足の哲学” 思いやりの精神と正確性が肝要

荒木美晴

普及から10年、代表が目指すのは世界ベスト4

普及から10年、ワールドカップでは右肩上がりに成績が上がっている 【写真:荒木美晴】

 日本アンプティサッカー協会によると、アンプティサッカーは1980年代にアメリカ人の切断障害者であるドン・ベネット氏が偶然ボールを蹴ることによりこの競技を思いつき、それ以降、アメリカ軍負傷兵のリハビリの一環として採用されたことから、一気に普及が進んだとされる。現在、世界では40カ国以上に普及し、アジアでは日本がけん引している。

 実は日本での歴史は浅く、国内で普及活動が始まったのは2010年のこと。元ブラジル代表で、その後就職のために日本で生活をしていたエンヒッキ・松茂良・ジアスがメンバーを集め始めたのがきっかけだ。そこから徐々に競技人口が増え、全国各地にクラブチームが発足し、現在は9つのチームが活動している。

 この日、講師役を務めたクラブチーム「AFC BumbleBee千葉」の代表・根本大悟は、「それまでは僕たち切断者が取り組む球技といえば、車いすバスケットボールくらいだった。アンプティサッカーはクラッチしか使わないから、どんな国も手軽に始められるうえに、競技性も高い。女子選手やジュニアも一緒にプレーできるので、可能性が広がりやすい競技だと思います」と、その魅力を語る。

 日本代表は、競技普及に取り組み始めたその年に、はじめてワールドカップに出場。16チーム中15位だった。12年のロシア大会は選考会を経てチームを結成したものの、12カ国中最下位に。だが、24カ国が参加した14年のメキシコ大会では、予選リーグ首位通過で決勝トーナメントに進出して11位と躍進、直近の18年メキシコ大会では10位と、少しずつ世界との距離を詰めている。現在は「ベスト4」を目標に掲げ、強化を図っているところだ。

 そんなアンプティサッカーを生観戦できる機会がある。11月2日から2日間の日程で、「第9回日本アンプティサッカー選手権大会2019」が(フロンタウンさぎぬま、富士通スタジアム川崎の2会場)が開催される。合同チームを含め、全国から集まった7チームがクラブ日本一を争う。

 根本は、観戦のポイントをこう教えてくれた。

「切断していると一言で言っても、くるぶしまである選手や、大腿部からない選手など、いろいろな選手がいます。それぞれ障害に合わせて脚の使い方を工夫しているので、そこをぜひ見てほしいです。味方への優しさがありながら、競り合いで倒れたりする激しさもある、面白さがミックスされたスポーツなので、観ていてワクワクすると思いますよ!」

◆◆◆ NHK番組情報 ◆◆◆

■11月1日(金)11:05〜11:54 「ひるまえ ほっと」
「百獣の王」武井壮さんがパラスポーツを体験、トップアスリートとの真剣勝負に挑みます。今回は「アンプティサッカー」に挑戦! 戦いの結果は……。どうぞお楽しみに!

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著者プロフィール

1998年長野パラリンピックで観戦したアイススレッジホッケーの迫力に「ズキュン!」と心を打ち抜かれ、追っかけをスタート。以来、障害者スポーツ全般の魅力に取り付かれ、国内外の大会を取材している。日本における障スポ競技の普及を願いつつマイペースに活動中

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