日本代表が強豪に“普通に”勝てた理由 元日本代表・藤井淳のスコットランド戦解説
布石を打っていたから生まれた松島のトライ
日本代表がスコットランド代表に勝利。ファンとともに喜びを爆発させた 【Photo by Yuka SHIGA】
――前回大会で敗れたスコットランドとの激戦を制しました。ポイントになった部分は?
「負けても決勝トーナメント進出の可能性がある」という状況でしたが、開始直後からチームの「勝って決める」という姿勢が見えたので安心しましたし、頼もしかったです。
サモア戦の解説で「スコットランド戦はボールを保持して連続攻撃を仕掛けた方が良い」と話しましたが、今日は前半から長い連続攻撃を続けるという日本独特の強みを出せていました。
今の日本代表は自分たちの強み、対戦相手の特徴がわかっていて、それに応じて戦えるのが素晴らしいところで、奇跡ではなく必然というか、普通に実力通りに勝ったという印象です。
――前半18分のWTB松島幸太朗選手のトライのように、連続攻撃では順目につなぐのではなく、何度も切り返す攻撃が目立ちました。
チームとしてスコットランドを分析して決めた戦い方だったと思います。
何度も切り返すと、たとえばHO堀江(翔太)選手が相手とぶつかってボールを出して、そのあと立ち上がるとまたすぐにボールが来て相手とぶつかる……ということを繰り返すので、体力的に厳しいプレーになります。もちろん、守る方にとってもきついプレーの連続なので、プレッシャーをかけることもできます。
日本代表は切り返す時にFWの選手が一人、相手のDFラインに接近したところに立っています。松島選手のトライのシーンでは、相手は近くにいる堀江選手を見なくてはいけない、さらにその後ろに今大会絶好調の松島選手がいて、そこも見なくてはいけない……という状況で、CTBラファエレ(ティモシー)選手が松島選手を飛ばしてWTB福岡(堅樹)選手にパスを通してチャンスを一気に広げました。
日本代表が序盤から布石を打っていたからこそ、生まれたトライだったと思います。
堀江は「考えられないぐらいすごい」選手
後半2分の福岡堅樹(背番号11)の独走トライに真っ先に駆け寄る堀江翔太(右)と稲垣啓太 【Photo by Yuka SHIGA】
あの場面はつないだ選手たちが相手DFに当たり勝ってつないでいたので、確信のあるオフロードパスでした。厳しいタックルを受けて、苦しまぎれにボールを放すのではなく、コンタクトで勝ったり、相手をかわして半歩前に出ているからこそ、オフロードパスが成功します。
――切り返しのプレーにも多く参加していた堀江選手は、ここでも相手DFをターンでかわしてボールをつないでいました。
堀江選手はスクラムの軸になって、ラインアウトでもスロワーという大役を担っていて、フィールドでは誰よりも目立つほどの運動量があります。相手と接近したところでのパスもうまいですし、味方が倒れた後のラックでのオーバーのスキルも高い。本当に特別な選手で、ちょっと考えられないぐらいすごいですね。味方にいたらものすごく助かる選手です。