フランクフルトの寒い夜、熱い空間 ブンデスリーガ探訪記(3)
日本人対決ならずも…長谷部が復帰
フランクフルトは長谷部が復帰。リベロとして最終ラインを束ねたが、終盤にPKを献上。「責任を感じている」 【Getty Images】
この日はフランクフルトvs.ブレーメンの取材だ。ご存じの通り、フランクフルトには長谷部誠と鎌田大地、ブレーメンには大迫勇也が所属しており、本来であれば日本人対決が大きな注目を集めるところだった。今季ブンデスリーガ1部でプレーする日本人選手はこの3人のみ。唯一の日本人対決なのだ。ところが、9月18日の練習で大迫が太ももを負傷し、4〜6週間の戦線離脱。さらには27日に長谷部がウニオン・ベルリン戦で味方GKと激突し、脳しんとうと診断され、クラブはブレーメン戦を欠場の見込みと発表した。万全なのは鎌田だけ。当初の期待感から一転、やや寂しい展開になるのでは、と日本を発つ前に心配していた。
ただ、試合が近づくにつれて風向きが変わった。鎌田がワールドカップ(W杯)予選を戦う日本代表に招集されたこと、そして前日には現地紙が「長谷部、復帰か」と報じたことで、再び期待感が高まってきた。はるばるドイツまで来ただけに、お目当ての選手がいるのといないのでは気分的にも違う。今回ツアーをアテンドしてくれたブンデスリーガの担当者も胸をなでおろしたことだろう。
キックオフ3時間前、コメルツバンク・アレナに到着。スタジアム・ミュージアムツアーに参加した後、記者室で配られたメンバーリストには長谷部、鎌田の名前がそろって先発に入っていた。
フランクフルトは勝ち点2を失う結果に
鎌田は得点こそなかったが、何度となく決定機に絡んだ。好調を維持するだけに、ゴールという結果を残したい 【Getty Images】
長谷部も「90分を通して主導権を握れて、攻撃もサイドを使って良い形の崩しもできていた。こういうゲームを勝ち切れなかったのはチームにとって痛かった。自分の責任を感じる」と振り返った。悔やまれるのは試合終了間際、PKを献上したシーンだ。
「完全にPKでした。自分はボールにアタックしようという感覚だったけど、相手の方が先にボールに触って……相手もPKを取りに来てたのもあるし。その前の(ロングボールの)処理をもう少しうまくやっていれば、あそこ(ファウル)までいかなかったかもしれない。最後、集中力を欠いてはいけないところで欠いてしまった」
一方、長谷部が評価した攻撃では、トップ下の鎌田が見せ場をつくった。序盤から決定機に絡むと、後半10分には右CKで鎌田が上げたクロスから最後はセバスティアン・ロデがファインゴールを決めて同点に追いついた。だが、チャンスがあっただけに、鎌田にもゴールが欲しかったところ。今季はドイツ杯の1点のみで、リーグ戦ではいまだ無得点が続いている。鎌田自身も若干の焦りを隠せない。
「これだけチャンスがあって入れられないシーズンは、僕自身もプロで初めてだし、頭の部分、気持ちの部分だと思うので、少しずつ良くしていかないとダメなのかなと。(焦りは)少なからずありますけど、別にマイナスに考えてもいいことにならない。点を取れていないですけど、試合に使ってもらえているし、それ以外のプレーの部分は悪くないから使われていると思うので。得点さえできれば、チームにとって大事な選手になれると思います」
来週はインターナショナルマッチのためリーグ戦は一時中断。再開に向け、長谷部は「きょうのミスを取り戻す」と意気込み、ミックスゾーンを後にした。日本代表に合流する鎌田は初めてのW杯予選に臨む。「代表にはあまり重きを置かず、チームで試合に出ることだけを考えてやっていたので」と控えめながら、「国を背負っているので、勝つことが一番大事。チームのためになれるようにやっていきたい」と決意を表明した。