大谷翔平の言葉から考える2年目の進化 打球角度、柔軟性、適応力…

丹羽政善
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提供:日本航空

ホームランボールに対し「今の打てたな、って……」

1試合に1球はホームランにできるボールがある、そう断言した大谷 【Getty Images】

 以前にも少し紹介したが、関連するので触れておきたい。

 8月のクリーブランド。1試合に1球はホームランにできる球があるのか? と聞くと、大谷は「ありますね」と即答した。では、その球をホームランに出来る、あるいはミスショットしてしまう。その分かれ目はどこにあるのか。

「もちろん、ホームランにできるボールが来たからといって、ホームランにできるわけではない。そこが難しい。でも、『今の打てたな』って思えるか、『甘くてもやっぱり今のは打てなかったな、打てそうになかったな』って思うかは自分の状態次第」

 あとで映像を見返したとき、自分がどう感じるか。それが調子を自覚するバロメーターの一つのよう。

 先ほどの打球軌道の話に倣うなら、それをうまくイメージできるような捉え方が出来ているときは前者であり、スイングがぶれ、軌道を描けないときというのは後者の状態ではないか。そして、8月終盤から9月上旬の不振時は、まさに後者だったと推測できる。

 いずれにしても、そうした一連の感覚は、大谷の打撃の軸をなしているようだった。

ボール球打ちは「いいところ、悪いところある」

8月20日のレンジャーズ戦で放ったタイムリー二塁打は、見逃せば完全にボールの内角低めスライダーを打ったものだった 【写真は共同】

 8月20日のレンジャーズ戦。大谷は8回2死一塁でライト線にタイムリー二塁打を放った。しかしその球は、見逃せば完全にボールという内角低めのスライダーだった。

 試合後、大谷は「いいところに飛んでくれたなと思いますけど、何回かやって出来るものでもないですし、何回か手を出したら、ほとんどファウルになるボールじゃないかなと思うので、一番は反応しないほうがいいのかな」と反省の言葉を口にした。

 ただ、決してボール球を打ってはいけない、と考えているわけではない。ケース・バイ・ケース。

「いい感じでボールは見えていると思いますし、ある程度、ストライクゾーンじゃなくても打てるような雰囲気はあるかなと思う」。実は、その日の3安打は、すべてボール球だった。

 とはいえ、そうした成功体験によって今後、無意識にゾーンを広げてしまう可能性もある。そのバランスが難しいが、大谷も「それはいいところ、悪いところあるんじゃないですかね」と認める。

 必ずしもボール球を打ってはいけない、という固定観念にとらわれる必要はないものの、「それがありつつ、ボール球はしっかり見送れるというのが一番、確率が高い」と大谷。「今日も間を抜けたりとかありましたけど、当たり的には決して良くなかったりするので。ボール球はしっかり見送って、ストライクだけしっかり打てる準備ができていれば、それが一番いいのかなと思います」。

 野球はある程度、確率のスポーツ。だが、それがすべてでもない。大谷の打撃はそんな柔軟性の上に成り立っている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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