大谷翔平の言葉から考える2年目の進化 打球角度、柔軟性、適応力…

丹羽政善
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「まだまだうまくなれる可能性がある」

現地9月24日、シーズン総括の会見に応じた大谷。左膝蓋骨の手術により2年目が幕を閉じたが、自らが残した成績に対しては「まだまだうまくなれる可能性がある」と評価 【写真は共同】

 9月29日(現地時間)、大谷翔平(エンゼルス)の2年目が静かに幕を閉じた。

 先立って24日、左膝蓋骨(しつがいこつ)を手術してから初めて、そして、シーズンの総括を兼ねて会見を行った。今季の成績――106試合に出場し、打率.286、18本塁打、62打点、51得点、出塁率.343、OPS.848についての自己評価を問われると、「その数字が結果的に残って、満足感が少ないというのは、一ついいこと」と答えたのは彼らしかった。

「数年前だったら、もしかしたら満足することもあるかもしれなかった。まだまだうまくなれる可能性がある。その気持ちがあれば」

 左膝に痛みを抱えながらの1年。特に終盤はその影響を否定できなくなった。そこまで考えれば決して悪い数字でもないが、中途半端な妥協を大谷は嫌う。短い言葉に、選手としてのスタンスが込められていた。

 さて、他にも大谷の言葉をたどると、今季は打撃に専念した1年だったこともあってか、彼の打撃論に触れる機会が少なくなかった。一部はすでに紹介したが、改めてまとめてみたい。

「球の軌道に合わすというより……」

ボールを捉えるより、当たった後の打球軌道にフォーカスが置かれていた 【Getty Images】

 今季、大谷は度々、打球角度を意識していることを口にした。

「結果的に上がっている打球に関しては比較的ヒットになったり、ホームランになっている率が高いので、そこ次第かなと思います。やっぱりゴロになればアウトになる確率が高くなっちゃうので、かといって上げにいくのではなくて、自然に上がるポイントでしっかり捉えられるかどうかが、今は大事かなと思っています」

 復帰して間もない5月の終わり、ヒットこそ出るもののなかなか打球が上がらず、ゴロのアウトを重ねた。平均値を見ると5月31日の時点で打球角度は2.9度。昨年の平均が12.3度だったので、数値的にもそれは裏付けられたが、当時の大谷は、こう自己分析していた。

「ポイントが前になっている」

 しばらくは、ポイントの修正に腐心した。

 平均角度そのものは、6月に入って本塁打を量産し始めてもほとんど変わらなかったが、角度のついた打球に関しては、高い確率でフェンスを超えた。奇妙な傾向だったが、以前大谷は、打球に角度がついているときというのは、「接点が多くなるのでいいこと」と語ったことがあった。

 その接点とは、投手の軌道にスイングの軌道を合わせることで生まれると解釈していいのか? 本塁打が出始めた6月8日の試合後に聞くと、「なんて言うんですかね……」と言葉を探しながら、説明を始めた。

「こういう感じでこう捉えにいっているときは、『いいよな』、『悪いよな』というのがある。左右によって(球の)軌道って違うんですけど、その軌道に(スイング軌道を)合わせにいくとぶれてしまうので、軌道に合わすというより、『こういうふうに飛んでいくんだろうな』という軌道で振れているかどうかが大事」

 ボールを捉えるというよりは、当たったあとの打球軌道にフォーカスが置かれていた。大谷独特の感覚が、そんなところに垣間見えた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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