B1東地区は激戦区がウルトラ激戦区に チームに変化をもたらす期待の選手たち

大島和人

主力が流出も補強でカバーしたSR渋谷

主力が多く移籍したSR渋谷。田渡ら新加入選手がどのようなチームを作りあげていくのか 【(C)B.LEAGUE】

 SR渋谷は27勝33敗で2018-19シーズンを終えた。今季は伊佐勉HCが留任したものの、選手の出入りが多い。ロバート・サクレが引退し、伊藤駿(→秋田)、長谷川智也(→大阪エヴェッサ)、満原優樹(→琉球)ら主力級が他クラブに去った。

 一方で補強の方向性は納得できる。シュータータイプの石井講祐と田渡修人を獲得。北海道の主力だった野口大介、関野剛平も加わった。正PGに名乗りを上げそうなのが189センチの渡辺竜之佑で、PGの陣容はやや薄いようにも思えるが渡辺、山内盛久の「沖縄コンビ」のゲームメークは楽しみだ。

 外国籍は211センチと大柄ながらアウトサイドのプレーもできるライアン・ケリーが健在。新加入のセバスチャン・サイズは本大会こそ不参加だったが、スペイン代表としてW杯ヨーロッパ予選で活躍した選手だ。

 若手は196センチのオールラウンダー・杉浦佑成のブレークに期待したい。馬場は高校時代から彼の親友で大学の同級生だが、学生時代は並び称される存在だった。徐々にプレータイムは伸ばしているが、結果に対する貪欲さ、チームを引っ張る勢いを見せてほしい。

経験豊富な古川が加入した秋田

激しいプレスを売りにする秋田にとって、古川の加入は大きい 【(C)B.LEAGUE】

 秋田は17勝43敗で昨季を終えた。今季は2017-18シーズンから指揮を取っていたジョゼップ・クラロスHCが退任。前田顕蔵アシスタントコーチがHCに昇格した。

 秋田の魅力は「イケイケ」のスタイル。激しいプレスで相手のミスを誘い、スティールを量産するスタイルはB1でも存在感を発揮している。外国籍に加えて帰化選手のウィリアムス・ニカがおり、負荷の高いバスケを実践する人材の厚みもある。

 加えて今季はシューター、PGと穴を埋める良い補強をした。古川孝敏は日本代表経験があり、2016-17シーズンのCSでMVPに輝いた選手。190センチのスモールフォワードで、得点力が高い。

 細谷将司は足を生かした守備力と、シュート力を持つPG。伊藤駿はスピードがあり、リーダーシップのあるPGだ。

 若手の多いチームだが上を目指してほしい存在は25歳の中山拓哉。筋肉質でパワフルなタイプで、オールラウンドなプレーが頼もしい。昨季はB1のスティール王に輝き、リバウンドも1試合平均5個近く取っていた。また昨季はバスケ人生で初めてPGとして起用され、プレーの幅をさらに広げている。昨年12月23日の千葉ジェッツ戦ではトリプルダブルも達成した。

北海道の目玉補強は橋本

琉球から北海道に加入した橋本は、チームのけん引役を担うことができるか 【(C)B.LEAGUE】

 昨年の北海道は10勝50敗と苦しいシーズンを送った。今季はライジングゼファー福岡やB2上位クラブのB1ライセンス不交付、残留プレーオフの勝利によってB1残留にかろうじて成功。今季はそんな苦しい昨季に比べて、劇的に陣容が充実している。

 指揮官は内海知秀HCで不変だが、集客やクラブ経営の好調もあって人件費を増額。橋本竜馬は新加入の中でも目玉となる存在だ。彼はシーホース三河、琉球で「チームを引っ張り、勝たせる」役割を果たしてきたPGで、31歳とまだ若い。守備で流れを変えられるハードワーカーでもあり、多嶋朝飛、松島良豪と3枚を使い分けられるのは大きい。

 もう一つ大きな要素はファイ・パプ月瑠(むーる)の加入と、市岡ショーンのけがからの復帰。パプは現代バスケで少し珍しい「純インサイド」タイプで、リバウンドやセカンドチャンスポイントを稼げる。市岡も10分以上はつなげるインサイドだ。パプは帰化選手、市岡は日本国籍で、これにより北海道は外国籍の枠をアウトサイドプレイヤーに割ける。

 マーキース・カミングスはB1最高レベルのハンドラーで、パワーとスピードは圧巻。昨季は名古屋ダイヤモンドドルフィンズでプレーし、1試合平均23.2得点を記録している。アウトサイドで持ち味を発揮するタイプだが、この陣容なら彼をスモールフォワードで起用できる。

 3季目を迎えるマーク・トラソリーニ、リバウンドが強く若いケネディ・ミークスもおり、相手に応じて組み合わせを模索することになるだろう。

 折茂武彦は30日、今季限りの引退を表明した。しかし昨季は社長業もしっかりこなしながら、1試合平均で15分以上のプレータイムを任され、3Pシュートの成功率も38.6%を記録している。49歳で迎える2019-20シーズンだが、若手とは違う意味で「アスリートの可能性」を感じる存在だ。ぜひ完全燃焼を見せてほしい。

 上位勢は盤石な一方で、下位の底上げが進み、全チームがCSを狙える陣容を持っている。激戦区がウルトラ激戦区になった――。それが2019-20シーズンの東地区だ。

2/2ページ

著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント