鈴木雄介「全ての距離で世界記録を」 競歩界初の金を勝ち取った先に目指す夢

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当面の目標は「20キロでも代表権を勝ち取る」

世界陸上での戦いを終えた鈴木。来年の東京五輪へ向けた思いとは 【写真:松尾/アフロスポーツ】

――晴れて50キロで東京五輪の内定を手にされました。来年の五輪でも、今回と同じように暑い中でのレースが想定されますが、そこで歩くイメージは湧いてきましたか?

 恐怖しか湧いてないですね(笑)。あの暑い中歩き切って、「これをもう一度やらなければいけないのかな」と思っちゃいましたね、正直なところ。初めての暑い中でのレースで勝てたので、もちろん歩けば勝つ自信はあります。ただ、やっぱり恐怖心の方が強いですね。特に50キロだと「歩き切れるのか」という怖さがあります。

 正直なところ、20キロで出ようか50キロで出ようか迷っています。来年2月に行われる神戸での日本選手権で優勝すれば20キロでも代表権を得られるので、それができたらどちらにしようか考えようと思います。もしくはどっちが見たいのか、ファンの方にアンケートを取ろうかな(笑)。当面の目標は、20キロでも代表権を勝ち取ることです。

――8月には、東京五輪のコースに関して「再考してほしい」という提言をされていました。実際に酷暑のレースを走ったことで、その思いに変化はありますか?

 強く、声を大にして言いたいですね。自分だけではなくて、50キロに出る選手たちみんなの安全を考えるべきだと思います。また、観客の方たちも過酷な環境に置くわけですよね。4時間近くかかる競技の中で、強い日差しを受ける高温多湿の環境下にいたら、自分たち以上に観客の方々にとって酷な環境なんじゃないかと考えた時に、私は日陰のあるコースにすべきだと声を大にして言いたいです。東京の中で、選手が安全に歩きやすいコースは作れるはずなので、そういったものを最大限作ってほしいです。

 今回も普通に歩けている選手がいないくらいの状況でしたし、東京も同じように過酷な状況になるはずです。ただ、湿度が高いのが一番の敵なので、東京はドーハまでの多湿ではないこともあって、今回よりはマシになるとは思います。今回は熱い空気がそのまま漂っているような感じだったので、同じ多湿な気候でも、より過酷な状況でしたね。

 とはいえ、東京五輪も同じように過酷な状況になると思います。私は今からでも遅くないと考えているので、少しでもそれを和らげるコースを選定してほしいと思います。自分一人の力では微力なので、メディアの皆さんの力もお借りして訴えています。これはレース直前まで言い続けたいですね。まあ、昔私が「皇居でやりたいです」という話をしていたこともあって、もしかすると今回のコースになったのかもしれませんが(笑)。ただ、それは夏ではなくて、通常の国内レースが都内とかでできたらいいなという思いでした。今は選考会などのレースが、言い方は悪いですが田舎の方でやっているので、もう少し首都圏の方に持っていきたいという思いが私にはあります。

――そうなってくれば、注目度も変わってきますね。

 近くでやっていれば「見に行きたい」という方はいらっしゃるんですよね。ただ、首都圏から(全日本競歩大会が行われる山形・)高畠や(日本選手権が開催される石川・)輪島に行こうとすると、いろんな事情があって難しいということもあります。なので、横浜や千葉・大阪など、ある程度人の多いところでやれたらいいなと思っています。また、IAAF(国際陸上競技連盟)競歩グランプリを日本で一つくらいは開催したいという思いもありますね。

――競歩界では五輪・世界選手権を通じて初めての金メダルを獲得したことにより、今後はさらにこの競技に注目が集まると思います。その流れを、鈴木選手自らが引っ張っていきたいという気持ちはありますか?

 やりたいという思いもありますし、「自分にしかできないんじゃないか」ということも思ってますね。ここまで勇気を持って強く言える選手は、自分しかいないんじゃないかと。競歩の選手は自分で発言するというより「結果で盛り上げたい」というタイプが多いので。でも、私の場合は結果だけではなく、やり方次第で盛り上げ方はあると思っている。そうしたことを、私が率先してやっていきたいですね。

(取材・構成:守田力/スポーツナビ)

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