データで振り返る日本代表の快挙 アイルランド戦で光ったタックル成功率

斉藤健仁

タックル成功率は驚異の96%

日本代表は確実なタックルで相手の勢いを奪った 【Photo by Yuka SHIGA】

 大きな勝因は、世界的強豪を12点、しかも後半は零封した組織ディフェンスにあったことは誰の目から見ても明らかだ。ジョセフHCも「今週の焦点はタックルでした。相手がどんなアタックをするか想定していました。選手たちの勇気のあるプレーをみて、アイルランド代表の厳しいアタックに対して持ちこたえることができたことを誇りに思う」と選手たちを称えた。

 タックルは205回で成功率はなんと96%と、しっかりと個々の選手が相手の芯にタックルしていたことがわかる。タックル回数はLOジェームス・ムーアが26回、FLピーター・ラブスカフニが22回、LOトンプソン ルークが19回とFW陣の奮闘が光った。

 またHO堀江、PR具智元、トンプソンのタックル成功率は100%で、ドミナントタックル(相手を仰向けにするようなタックル)の回数はムーア、トンプソンのLO陣が6回と、確実にタックルで相手の勢いを奪っていたことがわかる。

FW陣の献身が光る

田村に声をかけるリーチ。途中出場となったが、リーチのキャプテンシーも光った一戦だった 【Photo by Yuka SHIGA】

 また、攻撃ではデータ的に多くの数字は似通っていたが、日本代表がアイルランド代表より上回っていた数字がある。一連の攻撃でゲインラインを超えたパーセンテージが65%(アイルランド代表は44%)とそれだけ有効なアタックをしていた証拠であり、ゲインしたメートルも日本代表が858メートルでアイルランド代表の572メートルを圧倒した。

 ちなみにボールキャリーの回数はFL姫野和樹の17回がトップで、続いてHO堀江の12回だった。オフロードパスも10回(相手は6回)とうまく攻撃時に使っていた。またマイボール時のラックに参加した回数はHO堀江とLOムーアが30回とトップで、ジャッカルに来た相手をはがすクリーンアウトではLOムーアが18回、稲垣が16回だった。攻撃時も堀江、ムーアといったFWの献身ぶりがわかる。

 いずれにせよ、相手がボールを持つ機会を減らすためにも、「ボールをキープする」ことを掲げていた日本代表のアタックは勢いがあり、有効だった。トライはWTB福岡の1本だけだったが、アタックが効果的だったからこそ、SO田村優のPG4本につながったというわけだ。

 こうして、日本代表は攻守ともに正々堂々とアイルランド代表と渡り合って、10戦目(互いにテストマッチとして認定した試合では8試合目)で初めてアイルランド代表に土をつけた。

 予選プールA首位に立った日本代表は10月5日、サモア代表と対戦する。前回大会でも快勝した相手だけに、アイルランド代表戦で見せたようなセットプレーの安定、そして組織ディフェンスで戦うことができれば、十二分に勝機があろう。どちらかと言えば個々で戦ってくるサモア代表に、日本代表はしっかりと組織で対応したい。

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント