世界に衝撃を与える日本代表の“勝ち方” 元日本代表・藤井淳のアイルランド戦解説

構成:スポーツナビ

日本の連続攻撃がアイルランドの体力を奪った

アイルランド代表を破り、喜びを爆発させる日本代表 【写真:ロイター/アフロ】

 ラグビー日本代表は28日、ワールドカップ日本大会の第2戦でアイルランド代表と対戦し、19対12で勝利した。世界ランキング2位で優勝候補のアイルランド代表になぜ勝つことができたのか? 元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。

――優勝候補を破るという驚きの結果となりました。試合のポイントになった部分は?

 日本代表はジョセフHC体制になってからキックを多く使ってきましたが、今日はキックを使わずに早いテンポの連続攻撃を続けて、アイルランドが嫌がるアタックをやり切ったことが大きかったと思います。
 前半から執拗に連続攻撃を繰り返した結果、アイルランドは後半に足が止まりました。後半20分以降にピンチもありましたが、その時はアイルランドに足が残っていませんでした。日本代表が相手の体力を奪った。ここがポイントになったと思います。

――連続攻撃をする際は相手にボールを奪われる可能性もありますし、自分たちの体力が持たないという不安もあるかと思いますが?

 もちろん、攻め続けることはリスクもあります。しかし、今の日本代表はそこで戦えるという裏付けがあったのだと思います。それだけの練習をしてきて、その練習を乗り越えたことでつかんだ自信が、厳しい状況でも彼らを走らせたのではないでしょうか。

スクラムで反則を奪ったシーンは一番のビッグプレー

低く、8人がまとまるスクラムで、試合の流れを変えた 【写真:ロイター/アフロ】

――前半にキックパスから2つトライを奪われましたが、ディフェンスはどうでしたか?

 ディフェンスは全般的に良かったですが、特に大外を攻められた時の内側からカバーにくるディフェンスが素晴らしかったです。アイルランドはボールをライン際に回すと、そこから内側にパスを返してきましたが、そこでHO堀江(翔太)選手、LOトンプソン(ルーク)選手たちがよく戻ってタックルを決めていました。
 また、先ほども話しましたが、連続攻撃でアイルランドの体力を削っていたので、後半のピンチの場面でもアイルランドはボールを生かすのが精いっぱいで、攻められているはずの日本代表が逆に前に出ていました。

――スクラムやラインアウトなどのセットプレーはいかがでしたか?

 前半35分に自陣22メートルで相手ボールスクラムというピンチがありましたが、そこで押し返して反則を奪いました。これは今日一番のビッグプレーだったと思います。
 僕はスクラムを組むポジションではなかったので細かい技術はわからないのですが、ピンチをチャンスに変えたという意味でも大きかったですし、選手の「いけるぞ!」という気持ちをより強くしたプレーにもなったはずです。

――攻撃では4年前の南アフリカ戦のようなスペシャルプレーというより、確実なプレーが多かった印象です。

「ここでスペシャルプレーが出るかな……」と思ったポイントはいくつかありました。もちろん、そうしたプレーも準備していたと思いますが、グラウンドの選手たちは正攻法で勝てるという自信があったのだと思います。

 ロシア戦の後にアタックのブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)の精度を上げる必要があると話しましたが、今日は一人一人が前に出て、クイックボールを出す意識を持っていました。基本的にFWは2、3人のユニットでボールを生かし続けて、SHの流(大)選手、田中(史朗)選手もテンポを作り出しやすかったと思います。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント